今週のみずがめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
遠くとフッと繋がるということ
今週のみずがめ座は、何でもないようなシチュエーションで、宇宙的な感覚を養っていくような星回り。
「苔寺を出てその辺の秋の暮」(高浜虚子)は、京都を訪れ、実際に苔寺に遊んだ際に詠まれた句。夕方になって拝観時間が終了し、ちょうど苔寺を出たあたりの「その辺」に、作者は何かを感じた。
ただ、それはこれといった何かがあったという訳ではなくて、むしろ特別なものは何もないにも関わらず、それ以前にはなかった感興が琴線に触れてきたということなのでしょう。閑散としていながらも、どこか清らかで、夕闇に漂う空気はそこはかとなく宇宙的―。
そんな寺の周辺のなんでもない風景に宿った情緒を想像させてくれる一句と言えますが、それもこれも「その辺」という漠然とした日常語のチョイスと言葉の置き方による妙に他ならないように思います。あなたもまた、不意に自身の日常に遠くからやってきたものが紛れ込んでいるのを感じ取っていくことでしょう。
今週のうお座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
気付いたらデクノボー
今週のうお座は、何ら損得勘定の働いていない、阿呆なことを言っていくような星回り。
文芸評論家のミハイル・バフチンは、ドフトエフスキーの長編小説の基本的特徴は「ポリフォニー」、すなわち「自立しており融合していない複数の声や意識、すなわち十全の価値を持った声たちによる対話的交通」にあるのだと言いますが、その典型例として挙げられていたのが『白痴』のムイシュキンという人物でした。
この小説でムイシュキンは過剰なまでに「ばか正直」な人物として造形されている一方で、心に染み入る言葉、つまり「他者の内的対話のなかに自信をもって能動的に介入し、その他者が自分自身の声に気付くのを手伝えるような言葉の持ち主」なのだと言います。
分かりやすく言えば、この人は宮沢賢治のいう「デクノボー」なのであり、人のじゃまをするのが大嫌いで、またほめられようとすることもありません。つまり、小賢しい思惑がない分だけ、他人の本質をすっきりと見通す力を持っており、ぼんやりしているようで、ぐいっと相手の心をつかむコメント力の持っている、ということなのでしょう。あなたもまた、そんなムイシュキン公爵に図らずとも近づいていくようなところがあるかも知れません。
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