学び方にはいろんな種類があるものの、いちばん手軽にスタートできるのは読書。想像もしない世界に触れることこそ読書の醍醐味。本を楽しむワクワク感を思い出させてくれる5冊を読書好きが厳選。
料理と人生を同時に堪能
『世界のおばあちゃん料理』
ガブリエーレ・ガリンベルティ著 小梨直訳 河出書房新社
なんといっても世界のおばあちゃんたちの、愛ある表情が素晴らしい。日本のちらし寿司をはじめ、各国のレシピが掲載されていますが、マラウイ共和国のイモムシのトマトソース煮、ホンジュラスのイグアナ焼きなど珍しい料理も。冷蔵庫や壁に貼ってあるもの、器やテーブルクロスにも、お国柄や暮らしぶりが見て取れます。そしてレシピとともに語られる、彼女たちの人生。料理の背後には物語があります。実際に作るワクワクもあるはず。(森岡督行さん)
誰だってときめいていい!
『「役に立たない」研究の未来』
初田哲男、大隅良典、隠岐さや香著 柴藤亮介編 柏書房
科学の研究は「役に立つ」ほうが重要と思われがちですが、研究が役に立つか誰がジャッジするのか? そんな問いに立ち返った本。役に立つかどうかもわからない研究も含めた多様性こそが強みであり、自分が楽しいと思える研究に没頭する学者を守るのが、長期的なイノベーションにつながるそう。そして面白いことを突き詰める力は、科学者だけの特権ではなくて、私たちにもあるのだと自己肯定にもつながる一冊。(江南亜美子さん)
近くにあるのに知らない「土」の話
『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』
桐村里紗著 光文社新書
実は土って、宇宙よりもはるかに近いのに、知らないことばかり。この本は、個人のヘルスケアのためにも地球の様子を知ることが必要など、身近な自分の体の話と地球規模の話を、最新事例を踏まえ、医学的な見地から納得させてくれます。ミクロとマクロをつないでくれ、その上で自分にどんなアクションの方法があるのかを教えてくれる。できることから地球に貢献していける感じは、エコについても学びの伸び代があるように感じました。(鈴木美波さん)
「自分探し」より「自分なくし」
『さよなら私』
みうらじゅん著 角川文庫
これから自分はどうなるんだろう、何ができるんだろう、とワクワクしながらも不安になるわけですが、いっそのこと、私らしさなんて捨ててしまおう、っていうか、そんなものはそもそも存在しているのだろうかと疑ってみるのはどうだろう、とあります。未来がどうなるのかなんて誰にもわからないのだから、自分をなくそうと主張します。生きていけば、いいこともあるし、悪いこともある。それを一つひとつ味わうしかないんです。(武田砂鉄さん)
「批評」を学ぶと、視野が広がる
『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く』
北村紗衣著 ちくま新書
「批評」は感想とは違うのか? あるいは批評で言いきり、間違うことはないのかな、とか。批評について簡潔でわかりやすくまとめているこの一冊は、目からウロコの連続。最近は本だけでなく、映画や音楽の感想を、ブログやSNSに上げたい人も多いと思います。ただ「面白かった」と書くだけでなく、批評とは何かということが少し頭に入っているだけでも世界は広がるはず。カルチャー好きの人はぜひチェックを。(花田菜々子さん)
撮影/kimyongduck 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2022年2月号掲載