今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
言葉が先行していく
今週のかに座は、かなしくも人間らしい嘘つきであることに、とどまっていこうとするような星回り。
現代のテレビにおいて1番面白いのはCM(コマーシャル)であると思うことが多いのですが、それはCMの作り手が、しばしば奇想天外な語り手として知られる「ほら吹き男爵」こと、ミュンヒハウゼン男爵なみにサービス精神に溢れているからかも知れません。
「ほら」は文字通り“奉仕(サービス)”であることによって、本人が英雄となることを許さず、人間臭い人間にとどめるのだという言い方もできるでしょう。というのも、真実は人間なしでもそこに存在しますが、「ほら」は人間なしには決して存在しないからです。
今週のあなたもまた、自身がひとつの美しいコマーシャルになったつもりで、存分にほらを吹いてみるといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
いくつかの<私>
今週のしし座は、いのちの使い方に思いを馳せていくような星回り。
「死を怖れざりしはむかし老の春」は、作者・富安風生が数え年で92になった年に詠まれた句。若い時期はともかく、年老いた今は死が怖いという率直な気持ちがこめられているのでしょう。
若い時期は若い時期なりの恐怖はありますが、いまはもう季節に春がめぐってくるように、みずからの命運もあるがままに任せられるようになった。それでも、やはり死は怖い。掲句には、そうした虚飾を捨てた素朴な心情が、かつての自分やその思い出とともに湛えられている訳です。
あなたもまた、継承されていくいのちの流れと共に、おのれを感じていくことができるはず。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
大いなる辻褄合わせ
今週のおとめ座は、自分にとっていちばん大きい「分母」ということを考えていくような星回り。
いまの教育というのは学ぶ内容が細分化され過ぎてしまっていて、何か難しい状況に直面したとき、共通言語を見出せないために想像以上に会話が噛み合わず、なかなか集合知も生みだせない。
例えば、「夕焼けはなぜ赤いんだろう?」という問いに対して、大抵は科学的見地からしか答えが出てきません。でもこれだけでは、「夕焼け小焼け」や「赤とんぼ」などの童謡の歌詞に夕焼けが歌われていて、それは浄土のイメージや「郷愁」などの感情と結びついているとか、人文系の見地とは結びついていかないし、子どもも本当の意味では納得してくれないんです。
今週のあなたもまた、いま頭のなかにある個別的なトピックや思いつきをまとめて“通分”してくれるような、自身の世界観や宇宙観を表現するための普遍的な言葉を見つけていきたいところです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
自我の溶解
今週のてんびん座は、知らず知らずのうちに自分が染まっていた空気や感情に、改めて思い当たっていくような星回り。
「吾も春の野に下り立てば紫に」(星野立子)という句のごとし。春の野の、萌え出た草の色はうつくしい。そして一面のみどりのなかに、紫色が潜んでいるのもこの時期の特徴と言えます。作者はそのことを頭で認識する以前に、からだ全体で感じていたのでしょう。
また、この場合の「紫」というのも、おそらく草から感じられた視覚的な紫というだけにとどまらず、目に見えないところで捉えられた青よりも散乱しやすい短波長のはかなさや、自身を取り囲んで存在している霊的な背景であったのではないでしょうか。
今週のあなたもまた、そうした堅牢に凝り固まっていた自我が、不意に曖昧に広がって溶け出していくような体験をしていくことができるかも知れません。