今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
地球と向き合う
今週のさそり座は、解決できない問題にあえて固執していこうとするような星回り。
いまからおよそ500年前に制作されたデューラーの版画『メランコリアⅠ』には、海のそばの建築中の空間に腰をかけた有翼の天使的な女性が描かれていますが、お世辞にもおしゃれとも優雅ともとても言えない雰囲気が醸し出されています。
美術史家のパノフスキーはイコノロジーの見地から、人間の知恵とテクノロジーの象徴と深く関わると見なし、有翼の天使的な女性はそれらが陥っている深いメランコリーの象徴的存在なのだと考えました。そして人類がいくら認識を深めても、この地球がその把握を超えた「解決できない問題」をつぎつぎと差し出してくるという状況を描いた、一種のカリカチュアとも解釈できるのではないでしょうか。
今週のあなたもまた、できうる限り冷静に知性を働かせることでかえって途方に暮れてしまうような、天使的憂鬱に駆られていきやすい時期なのだと言えます。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ゆさぶりをかける
今週のいて座は、ここぞというタイミングで思いきり傾(かぶ)いていくような星回り。
「なの花のとつぱづれ也ふじの山」(小林一茶)という句のごとし。富士山という、日本人にとって尊い神さまのような存在を取り上げつつも、「菜の花畑のはじっこに、やっと棒にでも引っかかるかのように富士山がいるわい」というくらいの、じつに痛快な物言いで言い切ってみせる絶妙さというのは、なかなか見れるものではないように思います。
一面をおおう菜の花の黄色に、富士山の青と白が打たれる色彩の鮮やかな対比において、大胆で思いがけない構図のおもしろさと、余計なものを無視して切り捨てる単純化の原理という、日本絵画の伝統に見られる特徴を俳句という言語芸術のうちに見事に表現している訳です。
今週のあなたもまた、一茶くらいの絶妙さで、常識や枠組みをゆさぶっていきたいところです。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
開かれ
今週のやぎ座は、新しい文化創造へと踏み出していこうとするような星回り。
フランスの植民地であった、西インド諸島マルティニーク島出身の黒人詩人セゼールは、「白人のことばによって思考を飲み込まされた」として、詩的言語を通じて自身の内なる「ネグリチュード(黒人性)」を解き放とうとした人物でした。
「逃亡奴隷する“marronner”」とは、「島流しにする」という意味の英語「maroon」などに由来するセゼールの造語。それは逃亡奴隷という歴史的事実を抱く文化をあらたに作り直すための足掛かりであり、その実現のための巧妙な戦略でもあったのです。
今週のあなたもまた、他者を巻き込んでいくべく、どれだけ不思議な流動と変異をはらんだ言葉を放っていけるかが問われていきそうです。