今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
笑われて自由になる
今週のかに座は、良い言い方をすれば中立、悪い言い方をすれば仲間外れになっていくような星回り。
マツコ・デラックスさんの人気の秘密である、踏み込んだ毒舌と絶妙なトークスキルが一体何に支えられているのか。本人は2014年に刊行された自著の中で、「差別されているから笑われてるし、仲間外れだから許されてる」という見出しのなかで、分析しています。
この一節で述べられていることは、歴史学者の網野善彦が指摘しているように、「異類異形」といわれた、覆面や蓑笠姿の中世の悪党や山伏などの無縁者の本質とぴったり重なっている。彼らもまた差別されているがゆえに自由であり、異類異形鎌倉末・南北朝期の動乱における活動が根強く肯定されていったのです。
今週のあなたもまた、みずからの立ち位置を考えていく上で、マツコ的なるものを参考にしていくといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
真実一路
今週のしし座は、大人の階段をのぼっていくような星回り。
『敵ばかりわれには見えて壮年と呼ばるる辛きこの夏のひかり』(永田和宏)という歌のごとし。あからさまに自分の行く手に立ち塞がり、こちらを威嚇してくるかのように見える影もあれば、味方に見えてじつは敵という可能性がちらつく影もある。怖いのはむろん後者。
とはいえ、同性であれ異性であれ、敵に囲まれたことのないような人間というのは、人生において何かと真剣に向き合うということをまだ知らないのであり、その意味で、「壮年と呼ばるる辛き」と詠われているような一時期を過ぎてはじめて、本当の意味で人生は始まっていくのだとも言えます。
今週のあなたもまた、そうした世界線にみずから入り込んでいくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
自分で自分を癒していくということ
今週のおとめ座は、個人的な病みをこえて、文化の病い、時代の病いを引き受けていこうとするような星回り。
河合隼雄は、病いがある人が箱庭をつくると強いインパクトを受けたり、それが変化していく様子を見ると、素人でもその展開の意外さに気付いたりする一方で、普通に暮らしている人が箱庭にそれらしく自分の世界を構築したものは、見事なまでにおもしろくないのだそうです。
病んでいればいい作品が作れる訳ではなくて、それを表現するだけの力もきちんと持ち合わせていないと、疲れとか恐ろしさだけがダーッと出るばかりになってしまう。河合はさらに、時代の病いとか文化の病いというものを引き受けることで初めて、その人の表現は普遍性を持ってくるのだと言っています。
今週のあなたもまた、異常と健常のバランスをとるだけでなく、そこでいかに世界観を深められるかという問題に直面していくことになるでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
戸惑い、それは哲学の始まり
今週のてんびん座は、心中に陽炎がのぼっていくような星回り。
『裏山にかげろふを飼う女かな』(間村俊一)という句のごとし。「かげろふ」とは、光と影が微妙なたゆたいをみせる大気中の光学的現象、「裏山」というのも、少なくとも何事もない日常とはどこで断絶してしまった場所であることを匂わせていて、それがより一層「かげろふを飼う女」の異様さ、妖しさを際立たせています。
おそらくは、この「女」とは作者のこころのなかに棲んでいる、求めても手の届きようのない存在であったり、ときにひどく自分の心をかき乱してくる存在。日ごろ懸命に何事もない“ふり”をしている作者が、無性にそちらへ裏返りそうになっているさまを、そのまま詠いあげているような節があります。
今週のあなたもまた、いつもと異なる動きをする自分のこころに、どこかで戸惑いを覚えていくことになるかも知れません。