今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
下降運動を二乗する
今週のかに座は、いったんとことん低められることによって、高められていこうとするような星回り。
現代イタリア作家のイタロ・カルヴィーノの短編『柔らかい月』の幻想世界では、月は地球の引力圏で宙づりになり、その表面が溶け出し、地球へと落下して、柔らかな月は「ぱしゃっ!」と降ってくるのだという。
「落下する月」には落ちることによって昇ること、低められることによって高められる宇宙的実体が、やがてたどるだろう軌道線も秘められており、そうした軌道線に同調しようとする働きはわれわれ人間にも宿っているのではないでしょうか。
あなたもまた、そんな柔らかい月の破片を宿した存在のひとりとして振る舞っていくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
生きていればそういうこともある
今週のしし座は、少しコミュニケーションのスケール感を大きくしていくような星回り。
『幽霊とおぼしきものに麦茶出す』(澤田和弥)という句のごとし。
宇宙のカケラは現に今もなお飛んできているのであって、地球上というのはさまざまなものが交錯し交じり合い続けている坩堝のような環境なのだということを考えれば、そうしたものが居間のテーブルにやってきたのを感じとって麦茶を出すくらいはむしろ当然の反応という気もしてきます。
あなたもまた、動物や植物に話しかけるくらいは朝飯前のつもりで過ごしていくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
台所でUFOを
今週のおとめ座は、毎日使っているような生活必需品のなかに未知が帰ってくるような星回り。
それは、既知との遭遇。よく、<未知との遭遇>などと言いますが、認識の在り方からすれば、既知のものと繋がらなければ未知としての意味を持たないわけで、逆に言えば、既知のものというのはすべて未知を孕んでいるということになる。
それで、既知のものが未知のものとして見られ始めると、今度はUFOを見たりオカルトにハマる必要性がなくなっていくんです。
あなたもまた、自分自身を現実に入れておくための「容れ物」を欲していくような傾向がグッと強まっていくでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
予定調和を免れる
今週のてんびん座は、精神的な純潔を胸に秘めていくような星回り。
『夏みかん酢つぱしいまさら純潔など』(鈴木しづ子)という句のごとし。
27歳のときに婚約者の戦死の報についで母の死を知り、翌年職場の男性と結婚するものの妊娠と堕胎、そして離婚、離京を1年足らずで経験し、その後移住した岐阜で駐留米軍兵と恋に落ち、一緒に暮らすようになった翌年にこの句は書かれています。
おそらく、ここで言う「純潔」とは自分に正直にしか生きられない、どこまでもまっすぐな精神の在りようのことを言っているのでしょう。あなたもまた、年齢や世間からの目など気にすることなく、できる限りみずからの美意識に正直に生きていくべし。