BADニュースを言って親を傷つけたくないと思っている
優しい子たちなのです。そんな子たちが、自分の人生を生きていないと感じていたり、ましてや「消えたい、死にたい」などの気持ちを親に言えなかったことは想像できます。どうぞ、会話時間の量ではなく、日頃から安心して子どもがBADニュースを話せているかを振り返ってみてください。
もしいつか、お子さんが死にたいと漏らしたり、自傷行為をしたとしても、叱責するのではなく、
無理をして生きてきた子が自分のペースで生き直せるチャンス
だと思って、冷静に反応してください。「次にもしそういう気持ちになったら教えてくれる?」「もしリストカットをしてしまっても、後からでもいいから教えてくれる?」「切るとどんな気持ちになるの?」などの会話ができると、子どもにも、親に話していいんだという安心感が生まれます。死にたいという気持ちを否定し、改めさせようとするのは時に逆効果です。本人には、今直ちに実行しない理由がきっとあるはず。可愛がっているペットでも、好きなサッカーでもいい。
今生きている理由を理解してあげて、死を先延ばしにするところから始めてみる
のもよいと思います。それには、受け止める側の親のメンタルも健全でないと、子どもは安心して甘えることができません。保健所や精神保健福祉センターなど、守秘義務を守りながら話を聞いてくれるところもあるので、もしもの場合はそういった機関を頼ることも大切です。
少数ではありますが、養育の問題ではなく、どんなに家族に愛され、勉強もスポーツもできて人気者でも、幼い頃からまるで死にとりつかれてしまったかのような「気質」による希死念慮もある……と、診察をしていて感じていることも。既にお子さんを自死で失い、自らを責め続けている親御さんにそのこともお伝えしたいと思います。
話を聞いたのは…
精神科医 松本俊彦先生
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。薬物依存症や自傷行為に苦しむ人を対象に診療を行う。著書に、『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版)など多数。
まずは「知る」「考えてみる」
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『モーニング』で連載中の、悩める親子に向き合う児童精神科医を描く医療漫画。発達障害や不登校などさまざまな問題を取り上げる。6/23発売の第9巻は「希死念慮」がテーマ。
『ぼく』 作/谷川俊太郎 絵/合田里美 ¥1,870(岩崎書店) 答えを出すより 〝ぼく〟を想像してみる
「ぼくはしんだ じぶんでしんだ」で始まる、子どもの自死をテーマにした絵本。詩人・谷川俊太郎さんがつむいだ言葉と、合田里美さんの日常風景を切り取った美しいイラストで構成。
取材・文/嶺村真由子 イラスト/ながせこなみ 編集/太田彩子
*VERY2022年7月号「理由なき〝子どもの自死〟を考える」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。