運動とエンタメでカロリーを消費して、眠りにつく
――高橋さんは気持ちや自分のコントロールがかなり上手なように感じました。気持ちのオンオフをつけたり、心を落ち着けたりするのにコツはありますか?
人間はどうしても、気力があると考えてしまうと思うんです。気力が余っている時はあえて何かをし続けて、なんの考えも出てこないというところまで動き続けてしまえばいいと思います。思い悩むこともくたびれることも、エネルギーを消費すること。そのエネルギーがなくなれば、すっと眠れたりするものなんです。
僕は、ちょっと嫌だな、ストレスだなということがある時こそ、身体を動かすんです。そうしたらそのうち何も考えなくなって、そのまま寝てしまいます。どうせ考えても解決しないので、とにかく時間が過ぎるのを待つのが、一番心の健康につながるんじゃないかなと。
――たしかに忘れようとか寝ようなど、思えば思うほど神経質になって心も体も疲れますよね。体力的に疲れちゃえば、頭が動かなくなって心は休まるかも。
本を読むのも音声を聞くのも、エネルギーの分散には良いと思います。そっちで頭のカロリーが消費されると、他のことを考えなくなる時もあります。自分のことばかり考えていると、ない答えを求めてしまうので。
娯楽やエンタメが存在しているのは、自分から気をそらすためなんじゃないかと思う時もあります。他の世界への逃避は悪いことじゃないし、そうやって少し気をそらすと、せかせかしないで済む時があると思います。
おうち時間の過ごし方だけでなく、「リラックスできる自分のつくり方」まで教えてくれた高橋さん。少し休みたいな、そう思った時こそ、エンタメを使って他の世界に逃げてみる。そんな時、物語を届けてくれるのが高橋さんの声だったら……もっと、別の世界や、自分とは違う生き方の主人公に没頭できるような気がした。
イヤホンでノイズをキャンセルして聞くのもいいし、スピーカーのサラウンド感を楽しむのもいい。耳に残る高橋さんの声は、繊細すぎる私たちを包み込んでくれる。今夜は、ドラマや映画でなく、高橋さんの声で『騎士団長殺し』を聞いてみたい。
Amazonオーディブル『騎士団長殺し ―第1部 顕れるイデア編(上)―』
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作家デビュー40周年、村上ワールドの新たな結晶! 物語の魔術師、村上春樹のすべてがここに――。
一枚の絵が、秘密の扉を開ける……妻と別離し、傷心のまま、海を望む小暗い森の山荘に暮らす孤独な36歳の画家。ある日、緑濃い谷の向こうから謎めいた銀髪の隣人が現れ、主人公に奇妙な事が起き始める。雑木林の古い石室、不思議な鈴、屋根裏に棲むみみずく、そして「騎士団長」――ユーモアとメタファーに満ちた最高の長編小説です。
配信日:2022年12月28日
著者: 村上春樹
ナレーター: 高橋一生
作品ページ:https://www.audible.co.jp/pd/B09QW1XVLP
※この記事は2022年12月16日に公開されたものです