一定規模以上の雑所得の申告に必要な書類が増える
2022年分(2023年提出)から、前々年の雑所得の年間収入が1,000万円を超えている場合に収支内訳書の提出が必要になりました。
雑所得には、公的年金のほか原稿料など副業に関する所得も含まれます。2020年に1,000万円超の雑所得収入があった人は、2023年提出分の確定申告書に収支内訳書を添付することになりますので注意しましょう。
収支内訳書には、1年間の売上高のほか仕入額、広告宣伝費や接待交際費といった経費などを記載します。
書類を入手して手書きすることもできますし、国税庁の公式サイト内の「確定申告書等作成コーナー」を使って作成することもできます。2023年提出分以降からスマホでも作成可能になりました。
なお、前々年の雑所得の年間収入が1,000万円以下であっても、300万円を超えている場合には請求書や領収書などを5年間保存する必要が生じます。
今回、事業所得と雑所得の区別が明文化されました。国税庁は当初「年間収入300万円以下の副業はすべて雑所得」とする方針でしたが、その後の議論の末、帳簿書類の記録と保存の有無を踏まえて判定することで決着しました。
電子データで提出が可能な証明書類が増える
年末調整や確定申告の際には、控除証明書などの「添付書類」が必要になることがあります。
これまでは所定の書面でしか提出できなかった社会保険料控除や生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除などについて、2023年提出分から電子データやそれを印刷した書面での提出が可能になりました。
ちなみにe-Taxで提出する場合は、生命保険料控除や寄附金控除、住宅ローン控除などの書類はすでに提出不要となっています。
住宅ローン控除の要件が見直される
2022年度の税制改正で、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の内容が見直されました。以下のようにさまざまな変更点があります。
・適用期間が延長(2025年12月31日までに入居した人が対象)
・控除率:1%→0.7%
・新築住宅や買取再販住宅の控除期間:10年→13年
・借入限度額:4,000万円→2022年入居の場合、2,000万円~5,000万円
・適用対象者の所得要件:3,000万円以下→原則2,000万円以下
・床面積要件:50平方メートル以上→所得1,000万円以下なら40平方メートル以上50平方メートル未満でも可
これまで一律だった借入限度額が、住宅の環境性能や入居年に応じて異なるようになります。また、控除率は下がりましたが、所得や面積の要件などこれまでより緩和されて利用しやすくなっている部分もあります。
なお、この改正はすでに住宅ローン控除の適用を受けている人には影響しません。改正後の制度の対象になるのは、住宅ローンを組んで2022年1月以降に入居した人です。
特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の要件が見直される
マイホームを買い換えて譲渡益が出た(購入時より高い金額で売れた)場合、その利益への課税を繰り延べられる特例があります。これを「特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例」といいます。
もともとは2021年12月31日までとされていましたが、期限が2年間延長され、2023年12月31日まで適用できることになりました。
今回の延長と併せて、適用を受けるための物件の要件が追加されています。買い換えのために新たに購入する物件については、一定の省エネ基準(断熱等性能等級4以上および一次エネルギー消費量等級4以上)に適合していることが求められるようになりました。
確定申告の期間に関するよくある質問
最後に、確定申告の期間に関するよくある質問にお答えします。
2月16日より前に確定申告書を提出することはできないのか?
通常の確定申告の受付は2月16日からですが、それより早く確定申告書ができあがった場合は、早めに提出してしまっても問題ありません。
2月15日以前に提出した分は税務署が預かるという扱いになり、2月16日以降に正式に受け付けたことになります。もちろん、早めに提出しても適正な「期限内申告」として扱われます。
また、還付申告(払い過ぎた税金を返してもらうための確定申告)はそもそも通常の確定申告期間に関係なく、1月1日以降であれば提出可能です。
確定申告の期限に遅れたらどうなる?
還付申告(払い過ぎた税金を返してもらうための確定申告)なら、通常の確定申告の期間(2月16日から3月15日)に手続きできなくても問題ありません。5年以内であればいつでも申告可能で、特にペナルティなどもありません。
一方、税金を納めるために行う通常の確定申告では、期限に遅れると「期限後申告」という扱いになります。そうなると無申告加算税や延滞税がかかったり、青色申告ができなくなったりする可能性があります。
決められた期限を守れないと金銭的な負担が増えることにつながるため、なるべく早く着手して申告を済ませる、どうしても難しい場合は税務署に期限延長を申請するなどの対応を取りましょう。