今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
花咲かす樹のごとく
今週のかに座は、無条件に「ともにいること」をただただ受けいれていこうとするような星回り。
哲学者の鷲田清一は、『「聴く」ことの力』のなかで、患者の話をただ聞くだけで解釈を行わない治療法を例にあげつつ、ケアというのは「なんのために?」という問いが失効するところでなされるものだ、と主張しています。
親であれ恋人であれ子供であれ、何の条件もなしに、ほかの誰かと「ともにいる」ことが難しくなっている現代社会において、いかに他者を意味の外へ、自由な余白へと連れ出していけるか、そこにとどまれるか。
あなたもまた、ひとつそんなことを念頭においてみるといいかも知れません。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
膨張と凝縮
今週のしし座は、「書かないで書く」境地へと自分をもっていこうとするような星回り。
『独り句の推敲をして遅き日を』(高浜虚子)という句のごとし。弟子の十七回忌に発表された挨拶句。真宗大谷派の幹部僧であった弟子の面影を、「独り句の推敲をして」と詠んだわけですが、作者自身もその9日後に亡くなりました。
掲句において独り句を推敲しつつ遅き日を過ごすひとの姿は、明るい春の夕暮れを浴びつつ、永久に句の世界で遊んでいる作者自身の姿にも重なっていくように思えます。
あなたもまた、頑強な「私」を遅き日のなかに溶かし込んでいくような時間を、大切にしてみるといいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
水木的幸福道
今週のおとめ座は、「不可避な幸福」を追求していこうとするような星回り。
『水木しげると幸福の哲学』の著者である甲田烈によれば、世の幸せになるための方法論は主に収入結婚お金その他の「上昇」を説くものと、いま与えられているものに価値を見出し味わっていく「充足」を説くものとの2つに分かれるのに対し、漫画家の水木しげるは間違えようのない「不可避」なものとして幸福を説いたのだと言います。
甲田によれば、これは「『幸福』の条件というより、人生訓のふりをしながら、いかにして人間は「幸福」であるしかありえない、という、その際を説いて」おり、いわゆる欲求充足型の「幸福」論とは決定的に異なる「不可避」説がくっきりと浮かび上がってくることに気付くはず。
あなたもまた、どうしたら不可避な幸福を追求できるか、あるいは、すでにしていたかに気付いていくべし。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
失敗の型ということ
今週のてんびん座は、春のあわれを体現していこうとするような星回り。
『尻餅をついて掴みし春の草』(安積素顔)という句のごとし。作者は中途失明の盲俳人。尻餅をついて草をつかんだというだけの句ではありますが、句全体からなんとも言えない愛らしさが伝わってきます。
掲句の底にあるのは、しみじみと表情の奥からにじみ出てくるような愛すべきユーモアであり、それは作者が自分自身の気弱い哀れさをどこかで客観的に見ることができているからこそ為せる技でもあるのでしょう。
あなたもまた、自身の人間理解のほどが問われていくことになりそうです。