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[TVで話題]ゲームもスマホも無制限!ロボット博士の「育児で大切なたった2つのこと」

「子どもにスマホはNG」は本当?

──以前、テレビ出演された際に、子どもにスマホを持たせることについて話していたのも印象的でした。

多くの親が、子どもにスマホを持たせることを躊躇します。あらかじめペアレンタルコントロールで一部のWEBサイトを見られないように設定することも多いです。でも僕は、そういうのは大反対。娘たちのスマホもゲームの課金やダウンロードを無制限にできるようにしていました。いや、内心は、「こんなことをして大丈夫だろうか」とものすごく怖いんですよ(笑)。それでもいくらでもやっていいよと言えるのは、子どもとの信頼関係があると思っているからです。これはどうしてもダメだと思ったときは、ダメだと言います。

頭ごなしに叱ったり、取り上げたりするんじゃなくて「君たちのことを信頼しているけれどこういう理由でダメだと思うなぁ。どう?」と聞くようにすると思います。某有名オンラインゲームにハマっていた娘は突然、「もうやらない」と言いました。「気づいたの。これって大人たちがお金を儲けるための仕組みなのよね。もう消していいよ」と。僕は、本音を言えばすぐには消したくなかったですよ。これまでどれだけ課金してきたと思っているんだ?って。でも娘と一緒にデータを削除しました。

以前出演した番組でも話したのですが、子どもにあれだけゲームやスマホを制限しておいて、大人になったら突然、いくらでも見てもいいことにするのって変ですよね。20歳になったら、人間がいきなりバージョンアップして、使っても問題なくなるなんて、そんなはずがありません。世の中には色々な情報が溢れています。どんな人の心の中にも悪があるはずで、それとどう向き合って、付き合っていくか。世の中の善悪と、どう距離をとっていくか。それは経験でしか学べないと思うから、あえてこちらで「見ちゃダメ」と制限せず、自分で付き合い方を勉強してほしいと話しています。

──「このサイトは子どもに見せたくないな」と思っても基本的には放っておくんですか?

そうです。全部、子ども自身にやらせて自分で学ばせます。同時に何かあったら助けてあげられること、子ども自身を信頼しているということも伝えています。子どもの興味をわかってあげるということが大事ではないかなと。いやあ、繰り返すけれどやっぱり僕だって怖いですよ。課金すればお金も飛んでいくし、ドキドキしましたが、中途半端にやらせるのがいちばんダメだと思うんです。「好きなことをやりなさい」「ゲームをやっていいよ」と言うからには、子どもが使ったその先まで責任を持って、一緒に考えてあげることが必要だと思います。「どこが面白かった? 一緒にやろう」と言って僕もガチでポケモンをやりました。ロボット学者の中でおそらく一番、ポケモンに詳しいと思います。一緒にゲームをやって、何で娘はこのゲームにそんなに惹かれたんだろう、ととことん考えるんです。

うまくいかないのは「怖いから」

──お子さんの普段の学校の勉強はどうしていましたか?

さきほど、ド文系と言いましたが、実は僕、古文が大嫌いなんですよ。でも苦手分野こそ一緒に勉強したらいいと思います。我が家では、子どもを塾に行かせたり家庭教師をつけたりしないというポリシーでやってきました。塾に行く代わりに僕自身がオリジナルの問題を作って勉強を教えていたんです。宿題からテスト勉強のフォローまですべてオリジナルのテキストでやっていました。お金より時間をかけたほうがいい。自分で作ったほうが断然効率がいい、と思ってはじめました。ものすごく手間がかかるので誰にでもすすめられるわけではありませんが、娘と一緒にいる時間をたくさん作れることが何よりうれしかったです。

──今の日本の教育についてはどう思われますか?

「多様性を尊重しよう」とこれだけ言うんだったら、子どもたちの多様性も認めてあげられるような教育環境を作ろうよ、とは思いますね。僕の研究室は組織としては変わっているんです。何よりもまず、「ないものを作る」のがポリシーです。でも、今現在存在しないものをイチから作るのは、怖いんですよ。前例がないから。日本の多くの大企業においても同じだと思います。ヒット商品の二番煎じのように人のモノマネをしてしまいがちなのは、大失敗して経営者が責任を取らされるのが嫌だからですよね。僕の組織では、いくつかルールがあるんです。

まず一つは「すべての失敗は、古田のせいにしよう」ということ。研究にはお金がかかります。費用をかけた結果、成果が出なかったら大変です。何千万もつぎ込んでうまくいかないのは怖い。でも、僕の研究室ならそれもOKです。「できない」ということが実際にわかったんだから、それでいいじゃないですか。研究室では、古田に気を遣うのはやめろと言っています。「とにかく思い切りやってほしい。手加減してはダメだ」と。それをみんなわかっていて、安心して研究に打ち込めるから、成果が出るんです。

──多くの組織では冒険するということ自体なかなか難しい現状があります。

はじめにもお話ししましたが育児も同じですよね。とにかく、親に怒られたら怖い。親は子どものことで責任取らされるのも怖い。子どもは怖いから何かはじめる前にママに聞く。そういう恐れが本当の能力や可能性を摘んでしまったりするんです。僕らの研究室には、色々な成功例があるんだけれど、100の成功の裏には90の屍があります。ただ、それでも未知の可能性があるんだから、怖がらなくていいよ、すべての責任は、僕が負うからどんどん冒険していこうと話しています。うちの組織はタイムカードがなくていつ来てもいいんです。月にいっぺんしか研究室に来ない人もいます。自分が一番やりやすい方法を見つけられたらそれでいいんです。

毎日決まった場所に通勤・通学するのが効率的というわけではなくて、100人いたら100人それぞれが一番やりやすい方法があるはずなんです。まずはそれを見つけて、自分がいちばん研究しやすい環境を自分たちで作る。これが実現すると不思議とチームがまとまってくるんです。僕が困っていると研究室の仲間が気づいて助けてくれます。いつの間にか家族のような一体感のあるチームができる。それぞれの立場を理解したり、お互いの能力を引き出そうとしたりするような相乗効果が生まれてきます。これは子育てにもちょっと似ているんです。相手の個性を見出して、その可能性を引き出してあげる。お金や時間もかかることが多いし、何が起きるかわからないので怖いですが、相手と同じ価値観や歩幅で物事を見て、可能性を見つけ出したいと思います。

戦争や宗教間の対立など、この世の争いの根源は、すべて同じだと思うんです。他人のことが認められないということ。組織の中でも「あいつムカつく」ということはよくあるじゃないですか。相容れない思考であってもいったん受け入れて、そういう考えもあるのか、と知ると、争いはそう簡単に起きないと思うんですよ。子どもの考えることをまずは認めてあげよう。同じく家族や自分が属する組織のメンバーが言うことは聞こうというのがスタートラインだと思うんですよね。こんなふうにエラそうに言ったらまた妻に怒られそうですが……。

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「櫻壱號(サクライチゴウ)」東日本大震災後、福島第一原子力発電所内部探査などにも活用された災害対応ロボットの改良機

自分が死んだ後に遺せるものは……?

──そういえばロボットの話を全然していませんでした(笑)。

僕は、たまたまロボットを仕事にしていますが、職業って根源はみんな同じはずです。人の心を動かすものやサービスがあるからこそ仕事として成り立つんです。たまたま僕は、ロボットでそれができるからやっているだけです。これまでも、色々な人がそうやって文明を作ってきました。自分だけの持ち物って本当はないはずですよね。皆さんが今着ている服も靴も、死んだ後まで持っていくことはできません。数十年後にはここにいるほとんどの人が亡くなるはずです。皆さんの体や存在は、死んだ時点で自分のものじゃなくなります。人間の体を含め今は所有していると思っているものはすべて、期間限定のレンタル品みたいなものなんです。

僕は今55歳だから、残されたレンタル期間は順調にいっても30年か40年くらいでしょう。その間にいかに仕事をして、その成果を世に残し、土に還るか。僕の場合はレンタル期間に一番パフォーマンスよく世の中に残せるのがロボット技術だと思うからこの仕事をしています。ガウディのサグラダ・ファミリアも設計した本人はとっくの昔に死んだのにニョキニョキと伸び続けています。あと10年以内にはようやく完成するのかな。この世で残せるのは、たった二つだけです。自分の仕事と自分の意志を継いでくれる家族です。今の時代、これは別に血が繫がっている本当の家族とか子孫でなくてもいいんです。意志を継ぐ仲間と自分の仕事を後世に残すこと。人間にできることってそれくらいだと思います。

科学技術は生鮮食品と同じ

──ご自身が研究を続けていく中で感じていることはありますか?

素晴らしい小説や絵画は、古典の名作として世に残ります。でも科学技術は、どんなにすごいものを作ってもすぐにローテクになってしまうんです。10年前の新製品は今、見向きもされません。生鮮食品と同じでナマモノなんです。だから、いかに早く世に出して多くの人に普段の生活の中で使ってもらえるようにするかが重要ですし、進歩が早いからこそエキサイティングでもあります。僕は中学生のとき、難病になり、生死の境をさまよいました。死にかけたときに思ったのは、「自分が死んだ後の未来が見たい」ということでした。奇跡的に回復し、生き残ったからには自分で未来を作ろうと思いました。すべて今の研究につながっています。ロボットは多くの人の普段の生活に役立つことで、社会を変えることができます。自らの手で未来が作れるのがロボット技術なんです。

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