今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
リスクの海に浮かぶ小島
今週のかに座は、本来単なる効率的な魅了や生殖に還元しえないはずの生命活動本来の豊かさを、取り戻していこうとするような星回り。
動物への哲学的分析を重ねてきた思想家ジャン=クリストフ・バイイは、ニューギニアとオーストラリア北部のコヤツクリ科の鳥のオスが、周辺のくずを拾い集めてほとんど芸術的なまでの小さな箱庭を作ってメスを誘惑する習性を取りあげています。
彼によると、コヤツクリ科の鳥のオスにとって、求愛行動は単なる美しい儀式などではなく、いつでも不意に何か不測の緊急事態が現われ得る、果てしない悩みの種であるかも知れず、潜在するリスクの海の中でたまたま何事もなく表出したものが、「はかない刺繍」のように人間側に見えているに過ぎないのだと考えられるだろうと。
あなたもまた、そんな定型から外れた動きとたえざる問いかけとを、自身の性(セクシャリティ)に取り戻していくことになるでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
遠くの太陽を見据えて
今週のしし座は、できるだけこちらとあちらを等しくフラットに睥睨していこうとするような星回り。
『遠山に日の当りたる枯野かな』(高浜虚子)という句のごとし。
日常の何気ない眺めを描いているだけの句のように見えますが、これは平日は仕事に追われ、休日はショート動画を見るか飲みに行くかくらいしかしてないような人にはなかなかどうして難しい芸当なのではないでしょうか。
あなたもまた、目の前の日常だけでなく先の見通しまでまなざしを広げていくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
強制から共生へ
今週のおとめ座は、過剰な他者との触れ合いや同町圧力を適度に間引いていこうとするような星回り。
「家」とは共同体の最小単位であり、人間同士のネットワークが発生する場ですが、現代社会ではそうした共同体的な他者との触れ合いはことごとくプラットフォームに呑み込まれ、結果として相互的な承認への欲望はYouTubeやXの滞在時間に、そこでの広告収入へとますます変換されていく流れを強めているように思います。
そもそも、共同体の原点である「家庭」のもう半分は「庭」という字で形成されていたことを、今こそ私たちは思い出さなければならないのではないでしょうか。
あなたもまた、人間とばかりつるんでいないで、いつも以上に事物とのコミュニケーションに時間を割いてみるといいでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
存在を前にした長い沈黙
今週のてんびん座は、向こう側の世界からこの世を観じていこうとするような星回り。
『夢の世に葱を作りて寂しさよ』(永田耕衣)という句のごとし。
葱は主食ではないが、体を温めてくれるだけでなく、ウイルスに対する抵抗力もつけ、匂いをかぐだけで精神を安定させ、寝つきをよくしてくれるのだという。まさに八面六臂の活躍だが、何より土から生えるしなしなとした立ち姿がいい。したたかでいて、はかない食べ物なのだ。
あなたもまた、人生の寂寥感を味わうだけのほのかな主情に駆られていくべし。