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「小1の壁」の後にも"壁"は続く。入学後は時短?フルタイム?息切れしない働き方を考える

子育て

稼ぎたい、質を落としたくない

前出のWarisの登録者は30代40代が中心で、平均年齢は38歳。こどもが小学生になる時期は、管理職になったり責任ある業務を任されたりと、キャリアの重要な局面と重なる人も少なくありません。

「出産前から管理職で、管理職で復職したので、時短勤務が難しかった。時短に切り替えた場合、給料が大幅に減ることも問題視していたし、やることは変わらないという認識だった」(40代母親 / 1年生男子 / 埼玉県)

「仕事を中断して、帰宅後に落ち着いてから再開するため、時短勤務の必要がない。過去に時短をしたことがあるが、業務の量は変わらなかったため、質がかなり低下してしまった」(40代母親 / 3年生女子 / 奈良県)

「きちんと働いて稼いで、将来的に年金もしっかり受け取りたいので、時短勤務にはしません。わが家の地域は小学3年生まではだいたい学童に入れるし、公立も民間も学童は午後7時まで開いているので、保育園時代と同じように働くことができます」(40代母親 / 年長女子 / 埼玉県)

「フリーランスだったので時短勤務はしていませんでした。コロナ禍でリモートワークができる会社に会社員として転職し、結果的に一度も時短はしませんでした」(40代母親 / 3年生男子 / 神奈川県)

こどもが目の前にいるのに

いったん親が働き方のスタイルを定めても、こどもの様子によっては変えていかなければならない可能性があるのも、小学生ならではの問題です。

「小学校1年生の夏休み前にこどもが不登校になったことをきっかけに、時短勤務に変更しました。こどもの異変が深刻なものだと家庭側で気づくのが遅れ、安心して送り出せるようになるまで1年近くかかりました。小学校入学後はもう少し余裕をもってこどもの状態を注視したほうがよかったと後悔しています」(40代母親 / 2年生男子 / 東京都)

「週2日ほど在宅勤務をして、こどもを自宅で迎える生活をしてみましたが、仕事にならず半年で断念しました。業務が立て込んでいる親と、いつも通りに一緒に過ごそうとする子の間でギャップと衝突が起きて悲しいことになる。こどもからしたら、目の前にいるのにずっと相手にしてくれない状態だったのでしょう」(40代父親 / 2年生男子 / 東京都)

「時短はしなかったのですが、朝も遅くなり、宿題や音読が増えました。宿題のケアまではできないです」(40代母親 / 3年生女子 / 茨城県)

「楽になる時期」まで耐えないで

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田中美和(たなか・みわ) / 株式会社Waris代表取締役・共同創業者
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、日経BPにて編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。取材・調査を通じて接した女性の声はのべ3万人以上。女性が自分らしく生き生きと働き続けるためのサポートを行うべく2013年株式会社Waris(ワリス)を共同創業。フリーランスとして働きたい女性と企業との仕事のマッチング、リスキリングを通じた女性の就労支援、女性役員紹介事業等を展開。創業10年でベネッセグループ入り。前職時代もふくめて20年以上にわたり自分らしい働き方の実現を支援してきた専門家。新著『自分らしく働くための39のヒント』(KADOKAWA)。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事、国家資格キャリアコンサルタント
写真提供:Waris

仕事で忙しくしているせいでこどものサポートが十分にできていないのではないか、と悩む親たちに、田中さんはこうアドバイスします。

「仕事で貢献したいという思いと、こどもにとって大切な時期にしっかり向き合って二人三脚で乗り越えたいという価値観とのはざまで葛藤する人もいます。でも、完璧を目指す必要はないんです」

「育児の面ではひとりですべてやろうとせず、パートナーや親戚、近所のママパパ友、外的なサービスなど、周囲の力をどんどん借りてください。またキャリア形成の面では、中長期的な視点をぜひ持ってほしいです」

田中さん自身にも、4月から小学生になる娘がいます。「小1の壁」のプレッシャーを実感しているからこそ、「子育てやキャリアを俯瞰して見るように意識することが大事です」と話します。

「乳幼児期には乳幼児の育児に特有の大変さがありましたし、『小1の壁』のあとにも、人によっては中学受験だったり、高学年になると友達関係の複雑さが増したりと、"壁的"なライフイベントはこれからも絶え間なく続いていくはずです。子育てには『楽になる時期』というものはなかなか訪れないのではないでしょうか」

「ですので短期戦のつもりで無理をして乗り越えようとすると、息切れしてしまいます。そのときに自分が何を優先したいのかを考えながら、そのつど自分にフィットする働き方を自律的に選んでいくことが大切です」

また、働き方を見直すことでキャリアを失う不安や焦りを感じるという人には、こうアドバイスします。

「いまは雇用の流動性が高まっており、正社員からフリーになると二度と正社員に戻れないというようなことはありません。労働人口が減り、個人が企業を選ぶ時代です。どんな働き方を選ぶのか、この職場でどういう働き方をするのか、多様な選択肢の中からありたい姿を見つけてほしいと思います」

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※アンケートは引き続き募集中です

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OTEMOTO

親子サポートプロジェクト「6歳からのneuvola(6neu)」では、保護者の働き方のほか、学校行事の分担、携帯電話、おこづかい、ゲーム、勉強場所などのテーマを順次、取り上げています。アンケートは引き続き募集していますので、ご意見やご経験をお寄せください。

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