都会でありながら、歴史のある西洋建築も多く残る港町・横浜は、人気の観光地。とくに5月以降は市の花であるバラが春の見頃を迎え、散歩するだけでもワクワクします。幼い頃から横浜に通い、今では市内に住んでいるライターが、無料で楽しめるおすすめのイベントやスポットをご案内します。
町中の春の花を楽しむイベントが開催中。これからはバラが主役
草木に覆われた広い公園や、美しい花壇がある大通りなど、緑が豊かな横浜エリア。3月下旬から6月上旬には、花々の光景や植物のイベントが楽しめる「ガーデンネックレス横浜」が開催されています。
桜やチューリップに続いて5月頃に見頃を迎えるのが、市の花であるバラ。公園やバラ園など各所に、計2,000品種以上のバラが咲き誇ります。それに合わせ、5月3日(金祝)からは「横浜ローズウィーク」もスタート。今年初開催の園芸イベント「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2024」にトレンドのバラが並んだり、レストランでバラがテーマのメニューが振舞われたりとバラ尽くしに。
もちろん、街を歩くだけでも楽しいですよ。バラと一緒によい景色を眺められる公園を2つご紹介します。
横浜ローズウィーク
開催期間:5月3日(金祝)~6月9日(日)
開催場所:山下公園/港の見える丘公園/横浜山手西洋館/アメリカ山公園/横浜イングリッシュガーデン/八景島バラ園ほか市内各所
海や街を背景にしたバラ園を眺める「山下公園」
みなとみらいエリアや中華街からも足を伸ばしやすい名所「山下公園」。港に沿った広い敷地内に、約160種のバラが植えられた「未来のバラ園」が広がっています。
日本郵船の貨客船・氷川丸が浮かぶ海や、マリンタワーとホテルニューグランドなどを背景に、色とりどりのバラが咲き誇る様子を眺められるのはこの場所ならでは。園内にはベンチもたくさんあり、バラに囲まれながら優雅な気分でひと休みすることができます。
山下公園
神奈川県横浜市中区山下町279
バラ越しにベイブリッジを見下ろせる「アメリカ山公園」
高台の山手にも見所がいろいろ。移動には、地下鉄みなとみらい線の元町・中華街駅から直結で、エレベーターやエスカレーターで山手エリアまで行ける「アメリカ山公園」が便利です。園内からも、バラをはじめとした花々の花壇越しにベイブリッジを見下ろせるのがうれしいポイント。
敷地内には西洋風庭園もあるほか、公園の周辺の歴史を紹介する解説板の周りなどにもバラが咲いています。横浜の歴史を学びつつ、花がいっぱいの光景を楽しんでみませんか?
アメリカ山公園
神奈川県横浜市中区⼭⼿町97-1
港町に入ってきた西洋の文化を感じる洋館
山手エリアまで足を伸ばしたら、開港期に伝わってきた西洋文化の趣きを今に伝える西洋館の中ものぞいてみては?バラが咲く公園や庭園と隣接しているところが多く、散歩途中に気楽に立ち寄ることができます。「山手111番館」や「エリスマン邸」などにはカフェもあり、窓の外に広がる景色を眺めながらお茶をするのもおすすめです。
ここでは部屋や階によって異なる印象が楽しめる西洋館を2つご紹介します。
イギリス人貿易商が暮らしたスパニッシュスタイルの建築「べーリック・ホール」
元町公園にある「べーリック・ホール」。イギリス人貿易商B.R.ベリック氏の邸宅として、昭和5(1930)年に設計されました。手がけたのは、ほかにも横浜に数多くの建築を残しているアメリカ人建築家・J.H.モーガンです。
外観は温かな色合いで、玄関に並ぶ3つのアーチや塔のような煙突などが特徴的なスパニッシュスタイル。中に入ると、見どころがたくさん。
玄関ホールはやはりアーチが印象的。市松模様のタイルの床にも別世界へと誘い込まれます。
奥に進むと、多くの来客を迎えてパーティも開かれていたというリビングやダイニングが。リビングの化粧梁組の天井は重厚感がありますが、高さがある上に、アーチ状の扉から日の光も届き、華やかかつ開放的です。
2階は、フレスコ技法という手法で作られたマットな壁が特徴的な子ども部屋をはじめとした家族の部屋が並びます。その壁や家具が、書斎や婦人の寝室は柔らかなピンク色、子ども部屋は青というように異なる色で彩られ、それぞれで雰囲気が大きく変わるのもおもしろいところ。
なかでも目を奪われるのは、ところどころにある小窓「クワットレフォイル」。曲線と直線が組み合わさったエレガントな四葉型の枠と格子が、外の景色を印象的に切り取ります。
べーリック・ホール
横浜市中区山手町72
開館時間:9:30~17:00
定休日:第2水曜日(休日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
外交官・内田定槌氏の邸宅を復原。アメリカン・ヴィクトリア様式の「外交官の家」
続いては、山手イタリア山庭園に位置する「外交官の家」。明治43(1910)年に東京・渋谷に建てられた、明治政府の外交官・内田定槌氏の邸宅が移築復原されたものです。内田氏と親交のあったアメリカ人の立教学校教師、後に建築家として活躍したJ.M.ガーディナーによって建てられました。
19世紀のヴィクトリア朝で流行し、後にアメリカで発展したというアメリカン・ヴィクトリア様式の建築が華やか。屋根が魔女の三角の帽子のようにも見えてきます。
1階の内部は、賓客をもてなす客間やダイニングは黒に近いブラウンの天井の格子や寄木の床、深みのある色調の家具がどっしりと落ち着いた雰囲気を放っています。曲線を描くように張り出した出窓や花が描かれたステンドグラスの窓など、装飾の多さもエレガントなヴィクトリア様式らしいポイントです。
対して、奥にあるサンルームは明るさが際立つ空間。風が通り抜けるようなすがすがしさも感じられます。
2階はプライベートな空間で、少し素朴な印象。明るいブラウンの建具や家具とピンクから赤を基調としたファブリックでそろえられ、温かみのある雰囲気となっています。
外交官の家
横浜市中区山手町16
開館時間:9:30~17:00
休館日:第4水曜日(休日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
※付属棟に庭園を眺められる喫茶室もあります