今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
川と戦慄と私
今週のかに座は、どうしても無視できないものや相手、場にひき寄せられて、そこに飲み込まれていくような星回り。
永井龍男が朝日新聞に連載した小説『風ふたたび』は、華々しい人物はひとりも登場せず、ただ市井に生きるけなげな人びとの人間模様を描いた作品ですが、そのヒロインである久松香菜江について、登場人物の川並陽子が人物像を披露する場面があります。
話の最後で、この川並陽子という人物は自分の隠し通してきた罪の告白をするのですが、もしかしたらヒロインに対し、自分の罪の意識をあぶりだし、増幅してしまうような何かを感じ、あるいは罪悪感そのものを投影し、逃れられない気持ちを強めていったのかも知れません。
あなたもまた、何か言いようもなく惹きつけられるものがあるなら、そこに自分は何を投影しているのか、改めて思い当る節を探ってみるといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
平凡で、かけがえのない或る日
今週のしし座は、眼下に広がる景色の全体像を一望していこうとするような星回り。
『暑き日の続く或日の秋まつり』(岸本尚毅)という句のごとし。
掲句の「或日」とは、ごく平凡な日常としての一日であると同時に、人生の酸いも甘いも知った上でやっと迎えることのできた待望の一日でもあって、作者は「秋まつり」と口にした瞬間、その事実にふと思い至ったのではないでしょうか。
あなたもまた、自身が乗り越えてきた悲喜こもごもの道のりについて俯瞰的に捉えていくことになりそうです。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
密かなる抵抗
今週のおとめ座は、自分の中の慎ましさや恥ずかしさの文化性を保持し続けていこうとするような星回り。
戦後の日米関係を鋭く諷刺してみせた小島信夫の小説『アメリカン・スクール』では、主人公の一人である日本人英語教師の伊佐は、英語教育の改善をめざすアメリカン・スクールの見学会に参加するが、どうしても英語を話せない。
伊佐は見学するうちに、唯一の女性教師で英語にも堪能なミチ子に好感を覚える。そのミチ子は、見学会にあるものを忘れてしまい、それを貸してくれと伊佐に密かに頼むのだが、小説の最後にその借りたものが「箸(はし)」であったことが分かる。
あなたもまた、ある種の権威や上からの圧力に対して、ささやかな「抵抗」のありかを自分のなかに見出していくべし。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ホーホーホッホー
今週のてんびん座は、思いを雲に託していこうとするような星回り。
『鰯雲人に告ぐべきことならず』(加藤楸邨)という句のごとし。
作者は空高くを覆う一面の鰯雲を仰いでいるうちに、そのスケールの大きさに圧倒されると同時に、みずからの存在が小さく感じられたはず。これもまた、伝統的な自然との深いところでの交感の仕方のひとつと言えます。
あなたもまた、自分を圧倒してくれるものの前にみずからをすすんで立たせていきたいところです。