今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
理解など捨てていけ
今週のかに座は、低俗的であることを辞さず、むしろよりいっそう「低俗」に分け入っていこうとするような星回り。
『梵妻を恋ふ乞食あり烏瓜』(飯田蛇笏)という句のごとし。「梵妻(ぼんさい)」とは僧侶の隠し妻のことで、それをよく寺の境内にも入ってきたり、寺がある辺り一帯を徘徊しているような一人の乞食が恋い慕っているというのです。
これだけ言われてしまうと、どこか生々しい想像をかき立てられて、どうしても不倫だとか醜悪といった言葉が浮かんできてしまいますが、掲句には一概にそうしたレッテルでは片づけられないようなあわれさが漂っているように思います。
あなたもまた、乞食のように恋い慕うのであれ、梵妻の側に回るのであれ、自身の中にもよく分からない情念があることを改めて実感していきやすいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
平常心を極める
今週のしし座は、自分を支えてくれているアタラクシア的な基準を再確認していくような星回り。
エピキュリアン、つまり古代ギリシャのエピクロスの徒と言えば、人間の幸福とはつまるところ快の充足にあるとする“快楽主義者”を指して言われる言葉であり、資本主義下ではそれはいかに自由に使えるお金をたくさん持ち、それを飲食や美容、遊興などに投じることができるかということとイコールで結びつけられがちです。
ただ、実際にエピクロスが説いていたのは、「心の平静な状態(アタラクシア)」を善とする立場でした(出隆・岩崎允胤訳『エピクロス: 教説と手紙』)。
あなたが経験したここ数カ月の災難や珍事を通じて、どれだけ自分の中で“確信”が深まったのかを改めて確認していくにはもってこいのタイミングとなっていくはず。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
転!
今週のおとめ座は、不測の事態や想定外の展開をこそ楽しんでいこうとするような星回り。
『案内の宿に長居や菌狩(きのこがり)』(高浜虚子)という句のごとし。掲句では案内人のいる宿に到着し、ひと休みしてからキノコ狩りへと向かうはずが、なかなか重い腰をあげられずにいるのだといいます。
不測の事態や予定外の展開が起きているわけですが、むしろ、キノコ狩りという困難なトライアルに取り組もうとしている現状や、熟練のキノコ狩りの案内人というどう考えても一般的な世間とは距離があるような変わり者との出会いそのものを受け入れ、楽しんでいるような節さえあります。
あなたもまた、一見すると厄介な縁やしがらみであっても不思議と受け入れてしまっている自分自身に気が付いていくことになるかも知れません。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
吸い寄せられるように
今週のてんびん座は、自分の中の危険を嫌う性質と、知りたいという強い欲求とを、喧嘩させることなく両立させていこうとするような星回り。
E・L・カニグズバーグによる児童文学作品の傑作『クローディアの秘密』の主人公クローディアは、アメリカに住むごく普通の12歳の女の子であり、下に弟がいて、長女だからといって色々と無理を押し付けられることに不満を抱いていました。
彼女はニューヨークのメトロポリタン美術館へと家出するため、同伴者として一番お金を貯めている弟を選んでその気にさせ、「いろいろなものをなしですませる練習」までして、実行します。そこでの天使の像との出会いは、彼女の家出の目的を像の秘密を知ることを通して「ちがったあたしになって帰りたい」というものに変えていったのです。
あなたもまた、誰も知らないような秘密をあえて知ろうとすることの中に、決して危険ではないけれど、自分をこれまでとは違ったものにしてくれる活路を見出していくことになるかも知れません。