A子 そうそう。私はそれまでに仕事でつくった人脈をフル活用して、他業種で管理職をしている知り合いに言える範囲で相談したりしていました。今の上司も私の提案を自分の提案として発表したり、手柄を横取りしたりするから本当に嫌。中間管理職ならではのモヤモヤや孤独感はけっこうあるかも。
B子 私の場合、一日会議で埋まってしまうことや、承認系の作業が想像以上に多いのが不満。実際になってからのギャップに悩むことはあるよね。
C子 わかる。管理職になってみて、あらためて自分の知識や責任者としての覚悟が足りていないことに直面して、ヘコんだりすることも増えました。ただ、役職が上がった分、ある程度給料がUPしたのはメリットかも。私は給与査定も任されていて、メンバーより低くならない程度の差分をもらっています。
「管理職になって給料はUP!業務量は必ずしも増えるわけではないと思う」
B子 私は1.5倍くらい上がったかな。
A子 私の場合、管理職になると残業代が役職手当に含まれるから、メンバー時代と月給はほぼ変わらず。トータルの年収が少し増えた感じ。ちなみにうちの部のメンバーたちはみんな、面談のたびに「あの人のココが嫌」とか好き勝手言うから困ってて(笑)。全員の事情をくんでいたら組織は回らないし、人間関係の面倒くささも管理職ならではかも。
B子 メンバーに人事評価を伝えるときなんかは特にコミュニケーションの難しさを感じるよね。以前、自己評価が高めな、年上の男性メンバーに厳しめの評価を伝えたら気を悪くされてしまったことが。
C子 すごくわかる。自己評価が高い人には、事前に高めの目標を伝えておくのが大事だよね。そういう手柄を挙げて目立ちたい、評価されたいって人はプレイヤーでとがったほうが絶対にいい。逆に自分を客観視できて謙虚なタイプこそ、管理職の適性があると思っていて。そういうメンバーには強みを伝えて励ますだけじゃなく周囲にも「あのコを次の管理職候補に」とアピールするように心がけています。
B子 管理職に向いていそうだなと思う部下はいるけど、実際になりたい人は少ない印象。
C子 仕事量が増えると思っている人が多いよね。一日の時間は物理的に変わらないし、管理職になったからといって働く時間が2倍になるわけじゃない。業務量はそれほど変わらないのになーって思う。
A子 できないことは潔くあきらめるというのも大事かも。私の場合は家事が苦手なので、忙しくなると掃除や洗濯ができず、そんな自分にイライラしちゃっていて。今は夫が主夫として家事をしてくれるようになったのでストレスが激減。キャパオーバーにならずに仕事に集中できるのはありがたいです。
C子 家庭はもちろん、仕事においてもあきらめは大事。忙しすぎて処理できないことは優先度を決めて「来週にさせてください」と調整し、切り捨てるようにしています。そういう調整力だったり、前もって期待値をコントロールすることは重要だよね。
B子 全部を完璧にこなそうと思うまじめな人はつぶれちゃうかも。ある程度手の抜き方を知っている人のほうが長く活躍できると思います。私は管理職になってからかなり図太くなりましたから(笑)。
C子 わかる。メンバーから「C子さんみたいに働けない」と言われることもあるけど、実際は10個依頼されたうちの重要な6個くらいしかやっていないし、友達との時間を優先することだってある。要領よくやっているだけで、裏ではけっこうサボっています(笑)。
「全部完璧にやるのはあきらめる!管理職になってから図太くなったと思います」
A子 次の世代のためにも、いろんな人が管理職になってロールモデルのバリエーションを増やすことも大事だよね。子どもがいる人や、趣味やプライベートを大切にしている人が残業せずに管理職として働くこともできると思うし、社会全体が女性活躍を推進している今はすごくチャンス。昔より自分のスタイルで働くことが許容されていると思います。
C子 心の底から管理職が嫌ならすすめないけど、少しでも気持ちに余裕があるなら踏み出してみてほしい。
A子 あと、私は仕事に納得感がない人ほど管理職をおすすめしたいです。メンバー時代、会社の決定にモヤモヤすることが多かったんです。でも管理職になってからは決定に至るまでの経緯が見えるし、自分で仕組みを変えられることも知りました。
C子 方針決定の当事者になれることを前向きに考えるか、それを責任ととらえるかってことだよね。
B子 役職が上がると裁量が持てて成長できるし、自分が磨かれている実感もあります。自分たちの働きやすさは、自分たちでつくっていけると思います。
裁量が持てる分、自分で働きやすさをつくっていける!
4. 管理職を取り巻く現状と今後の対策は?“管理職の今”がわかるキーワード10
本来は喜んでいいはずの“昇進”。なのに、管理職になるのを嫌がる人がここまで多いのはなぜなのか。『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』の著者が、その原因や有効な対策を詳しく解説!
【現状1】女性役員比率19%の目標
「これは政府が2023年に発表した目標。男女共同参画局が公表した2022年時点のデータによると、女性役員比率の平均は、日本以外のG7加盟国の38.8%に対して、日本のプライム上場企業は11.4%でした。労働力としての女性の割合は増えている一方で、役員および管理職がなかなか増えない原因は日本企業の昇進構造にあります。総合職の社員を平等に選抜するため時間がかかり、管理職になる平均年齢は他国と比べて10年ほど高い。女性にとっては出産して未就学児を育てる年齢も選抜期間に含まれるため、管理職になることを早々にあきらめてしまう人がとても多いんです」
【現状2】プレイングマネージャー化
「“プレイングマネージャー”とは、部下の指導などを行うマネージャーと、現場仕事を行うプレイヤーとしての役割をともに担う人のこと。少子高齢化による人手不足や成果主義のトレンドによって、バブル崩壊後から増加の一途をたどっています。成果を上げ続けるためにプレイヤー業務を余儀なくされ、その結果、マネージャーとしての役割がおろそかになり部下が育たない。管理職のファーストキャリアである課長クラスが陥りやすい、悪循環のひとつです」