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「年金は払い損」の噂の真相は?女性が老後に損しないために知っておきたい年金の知識[専門家に聞く]

あなたはどのくらい老後に備えていますか?「老後2000万円問題」が話題になったように、公的な年金制度だけで生活するのが難しくなっている現代。とはいえ、生きている限り支給される老齢年金は生活資金の土台となるので、少しでも多くもらえるようにしておきたいものです。一般的に男性より長生きする女性は、遺族年金も重要ですし、遺族年金や障害年金は現役世代の保険の役割もあります。社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーで『年金格差はこうして起こる!? 女性のための老齢年金と遺族年金』(日東書院本社)著者である拝野洋子さんに、年金の基礎について教えていただきました。

年金の種類

まず、年金には3種類あります。

一つ目は、老齢年金。原則65歳から生涯にわたって受け取ることができます。国民年金に加入していた人は老齢基礎年金、厚生年金に加入していた人は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金が支給されます。

二つ目は、障害年金。病気やケガによって、働けなくなったり生活に支障が出たりするときに支給されます。

三つ目は遺族年金。ある人が亡くなったとき、その人によって生計が維持されていた遺族が受け取ることができます。

20歳以上60歳未満の国内に住んでいる人は、国民年金への加入が「義務」です。とはいえ「年金は払い損」というウワサを聞いたことがある人もいますよね。その答えはNOです。

年金を払わなければ、単純に老後に困ることになります。老齢年金は65歳から受け取ったとして、およそ10年ほどで支払った保険料の元は取れるんです。2023年の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳。女性は50%以上が90歳まで生きると言われています。

日本では、突然命を失うような事件に巻き込まれることは稀。そういう意味で治安が悪い国ではないので、早く亡くなることの方が少ないのです。長生きする可能性が高いため、払った以上に貰っている人が多いのが実態です。

年金制度は、現役世代の保険の役割も担っています。自分が病気やケガで重い障害を負えば障害年金が、稼ぎ手が亡くなった場合には遺族年金によって、万が一のときの生活保障をしてくれるのです。いつ事故に巻き込まれるかなんてわからないことですから、もしものときに備えて、年金はきちんと納めておくことを勧めています。

もし納付が厳しいときでも、所得の基準を満たしていたり、失業等による特例免除によって、免除や猶予の制度がありますので、市区町村の国民年金担当窓口や、年金事務所に相談してください。未納(滞納)だけは避け、必ず何かしら手続きをとってくださいね。なお、過去2年間に滞納した保険料は遡って納付ができます。

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AdobeStock

老齢年金を受給するために知っておきたいポイント

老齢年金を受け取るには、10年間の受給資格期間が必要です。受給資格期間とは、保険料を払っていた期間に加えて、免除や猶予の期間、厚生年金や共済組合などの加入期間、「カラ期間」があります。

カラ期間とは、「合算対象期間」のことで、主婦や主夫、学生、海外居住などで任意加入しなかったなど、強制加入以前に国民年金に加入していなかった人が、無年金にならないように作られた制度のこと。カラ期間は受給資格期間には含まれるものの、受け取る年金額には反映されません。

老齢年金の繰り上げ・繰り下げどっちが得?

老齢年金は本来65歳から受給が始まります。繰り上げ受給とは65歳より早く受給すること、繰り下げ受給は65歳より遅く受給することです。繰り下げ受給では、66~75歳(昭和27年4月1日以前生まれの場合は70歳まで)の間で受給開始時期を選べます。

繰り上げ受給と繰り下げ受給はどちらがお得なの?という質問をよくいただきます。それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

若いときに病気を患っているなど、長生きが難しそうだと感じる場合は、繰り上げした方が損しない可能性があると考えられます。65歳での受け取り開始と比べたとき、昭和37年4月1日以前生まれの方は、1か月につき0.5%減額され、昭和37年4月2日以降生まれの方は0.4%減額されます。

注意点はいくつかあります。老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げが行われます。一度繰り上げ受給の手続きをすると、取り消しができません。繰り上げ後にケガをしたり病気になったりしても、障害年金の請求ができなくもなります。

また、自営業者等(第一号被保険者)の夫が亡くなった場合、条件を満たしていると「寡婦年金」といって、夫が受け取るはずであった老齢基礎年金の4分の3の金額を、妻が60~65歳の期間限定で受け取れるのですが、繰り上げ受給後に夫が亡くなった場合には、寡婦年金は請求できなくなってしまいます。

繰り下げ受給については、65歳から受け取る場合と比べて、1か月に0.7%も受給額が増えます。ただし、年金額が増えることによって、税金や介護保険料にも影響が出てきます。

繰り下げ受給で、私が一番のデメリットだと感じるのは、加給年金が65歳から受給開始までの間、受け取れなくなることです。加給年金とは、年金版の家族手当のようなもので、厚生年金に20年以上加入している人の配偶者が、一定の要件を満たしていれば、1年間で約40万円もらえるもの。40万円分が後から加算されるわけでもないので、その点は損だと感じます。ただ、老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰り下げは別々にすることも可能ですので、加給年金を踏まえて、老齢厚生年金を65歳から受給開始し、老齢基礎年金を繰り下げすることもできます。

ここまで繰り上げ受給・繰り下げ受給のいくつかのポイントを紹介してきましたが、どの選択が得かは個々のケースで異なります。一人で考えれば、この選択が得するものの、夫婦単位で考えると損をするといったことも。そのため、年金事務所に相談することをおすすめします。

「ねんきん定期便」はここをチェックしよう

ねんきん定期便は毎年、誕生月に届きます。50歳未満と50歳以上では書かれている内容に違いがあります。

年金見込み額について、50歳未満の方は、今までの保険料の納付状況で書かれているのですが、50歳以上の方は、60歳まで今のまま保険料をかけた場合の年金見込み額が書かれています。つまり、それまでに今の会社を辞めたりすると、見込み額より実際の金額が下がる場合がありますので、注意してください。

また、厚生年金の保険料が給料から天引きされているにもかかわらず、会社で手続きしてないからか、払っていないことになっているという話を稀に聞きます。単純なミスか、意図的なものかはわからないのですが。なので、きちんと払っていることになっているかは、確認した方がいいでしょう。

なお、ねんきん定期便を捨ててしまったという方もいらっしゃると思いますが、捨てたからといって受給額が変わるわけではないので安心してください。「ねんきんネット」を使ったり、年金事務所に行けば、記録の確認はできます。

ただ、間違っていた場合に気づけないので、ねんきん定期便が届いた際に、内容に誤りがないかは最低限チェックした方がいいですし、かさばることを避けたいのでしたら、捨てる前に写真に撮ってデータで残しておくのもおすすめです。

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