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味や形が変わるのは当たり前。自然のリアルを毎年届けるカゴメの「農園応援」

おいしい果物なのに、未来に受け継げないかもしれないーー。日本各地の小さな農家は、自然災害や後継者不足と常に向き合っています。希少でおいしい農作物をつくる農家をカゴメが応援する取り組みが、生産者、産地、消費者をつなぎ、少しずつ広がりを見せています。

しまなみ街道で結ばれた瀬戸内海の島のひとつ、広島県尾道市の生口島(いくちじま)は、温暖な気候で雨風が少ないことから柑橘の栽培が盛んです。

ここで40年以上、柑橘の栽培を続けている向井元秀さんの1年は、冬に始まり、冬に終わります。食べ頃になった果実の出荷が終わるとすぐ、翌年の栽培に向けた準備を始めるからです。

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「瀬戸田潮風しらぬい」をつくる、広島県尾道市瀬戸田町の向井元秀さん
写真提供:カゴメ株式会社

百戦錬磨の農家の技

向井さんは自宅の隣に広がる果樹園で、夏の猛暑では水やりを欠かさず、台風が来れば枝を支え、冬は防寒用のシートで樹木を覆います。樹上でギリギリまで完熟させてから収穫し、その後、土壁の貯蔵庫で「追熟」させていきます。広島県果実農業組合連合会(JA広島果実連)で38年にわたって技術指導員をつとめ、樹木医の資格をもつ向井さんならではの技とこだわりが実を結んだ「瀬戸田潮風しらぬい」。向井さんは「子どものように、大切に大切に育てています」と話します。

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通気性の良い土壁の蔵で「瀬戸田潮風しらぬい」を「追熟」させる向井さん
写真提供:カゴメ株式会社

「農作物を最もおいしい状態で届けてくれるのは、百戦錬磨の農家さんの知見と経験、努力があってこそです」

そう話すのは、カゴメ健康直送事業部の満岡憲司さん。向井さんのように全国各地で希少な農作物をつくっている農家をサポートするプロジェクト「農園応援」を担当しています。

2016年に始まった「農園応援」は、現在は全国4地域8農家が育てる桃、トマト、いちご、メロンなどの農作物を、青果や加工品として「カゴメ健康直送便」で消費者に届けています。

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向井さんの「瀬戸田潮風しらぬい」は2025年1月29日から、600箱限定で発売。「農園応援」はリピート率が約5割で、毎年楽しみに待っている人も多い

発売

写真提供:カゴメ株式会社

"つくり続ける"ことを応援

満岡さんはもともと、生協や百貨店、スーパーにカゴメ製品を売り込む営業担当でした。「農園応援」を担当するようになった2023年からは、全国の産地をめぐって農園を訪ね、スーツを脱いで作業着と長靴で畑に立つことも。方言が理解できない中で「食べんね?」と声をかけられ、試食した果実のみずみずしさに感動したこともありました。

「農家さんのこだわりやものづくりの原点に触れ、『だから日本の食は豊かなんだ』と改めて感じています」

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「農園応援」を担当するカゴメ健康直送事業部の満岡憲司さん
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

向井さんのようなプロフェッショナルな農家を、なぜ大企業であるカゴメが応援するのでしょうか。その背景には、農業の担い手不足という大きな課題があります。

広島県の資料によると、県内の農業就業人口や総農家数は減少を続けています。2015年時点での農家数は1990年と比べて半減。当時すでに65歳以上の担い手が約8割を占めていた状況で、高齢化はますます進んでいます。

資料

「瀬戸田もかつては柑橘の名産地として活気がありましたが、過疎化が進み、農家の数も生産量も減少の一途です」と向井さん。農家の高齢化や後継者不足は全国各地で起きており、もはや一農家だけでは解決できない問題になっています。

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山形県鶴岡市の「庄内砂丘メロン」は一玉ずつ丹念につくられていた
写真提供:カゴメ株式会社(満岡さん撮影)

満岡さんは、「『農園応援』の取り組みを通して応援する方法はさまざまです」と話します。

「青果や加工品を販売するだけでなく、産地を知ってもらうことで観光や移住を検討するきっかけをつくったり、新たに就農を希望する人を農家につないで知恵や技術を伝えてもらったり。それぞれの農家が実現したい夢や解決したい地域課題に合わせて、どんな方法なら応援できるかを考えています」

例えば、福島県産の桃「あかつき」は、旬の桃を長く味わってもらおうと2022年から「福島あかつき桃ジュース」として販売。同時に産地の桑折町(こおりまち)と連携し、「新しく農業を始めたい人と農家をつなぐ役割を担えたら」という思いから、さまざまな情報発信に取り組んでいます。ジュースの販売は、町の知名度を上げるきっかけになりました。

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