今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
真実味にもとづく時刻修正
今週のかに座は、「時計屋の時計春の夜どれがほんと」(久保田万太郎)という句のごとし。あるいは、必要以上に根深く自身に浸透してしまっていた怪しげな魔法や偏見から解放されていこうとするような星回り。
軽い冗談のような一句なのですが、「春の夜」からにじみ出てくる、どこかかすみがかった柔らかい浮遊感のようなものが効いて、現実と虚構との境い目がうすれた時の臨場感がなまなましく伝わってくるようです。
掲句にひもづければ、みんなバラバラの時間をさしていても、誰もそれにツッコまないどころか、「本当の時間」を知ろうとも、ズレた時計を修理しようともしなくなってしまったのだとも言い換えられるかもしれません。
今週のあなたは、そんな不感症気味な世の風潮に知らず知らず引っ張られていた自分をリセットしていくような流れが、不意に出てきやすいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ぼけにぼけを重ねてみる
今週のしし座は、「日常のごくささいな死の欲動」という言葉のごとし。あるいは、「取り返しのつかないことをする」経験の後に、視界の色彩がよみがえっていくような星回り。
誰しも子供の頃や思春期の頃には、これをやったらまずいんじゃないのかなあと思いつつ、ついやりたくなってしまったというような記憶のひとつやふたつはあるのではないでしょうか。
個人的には、台風が来るたびに自転車にのって地元で一番大きな坂の上までいって、雨が降るなか全力で駆け下りたものだったし、ほぼ毎日通っていた小学校の廊下にあった火災報知器のボタンも、一度だけ発作的に押してしまったことがありました。
雨上がりに通る坂はいつもより輝いて見えたものだし、ジリリリリリという耳をつんざくような警戒音が鳴っていない廊下は平穏そのものでホッとしたもの。
今週のあなたにもまた、‟いつもの日常”を飛び越えて「あちら側」へ突きぬけてしまうような瞬間が訪れていきやすいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
平穏無事で生きている、私たち
今週のおとめ座は、「いずこより来たるいのちと春夜ねむる」(細見綾子)という句のごとし。あるいは、阿呆になる瞬間をみずから呼び込んでしまうような星回り。
おとめ座の人たちというのは、みずからの手の届く範囲内をきれいに整理整頓し、秩序をもたらしていこうという衝動が人一倍強いですが、だからこそ、時に手に負えないようなカオスに取り囲まれてしまったり、みずからカオスのなかに身を投げ入れていきたくなるような衝動に駆られてしまうところもあるはず。
今週のあなたもまた、そうしたいつもの、ないしあるべき自分への反動のような衝動に拍車がかかっていきやすいでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
当り前のことを問い、応えようとすること
今週のてんびん座は、『論理哲学論考』に秘められた呪力のごとし。あるいは、みずからの言葉の限界と、それでも感じずにはいられない神秘とのあいだで、深い沈黙にとらわれていくような星回り。
一見するとその意味するところがよく分からない、まるで呪文のような言葉に、どういうわけか、人は激しく胸を揺さぶされることがあります。
特に、この世のどこにも自分のいるべき場所を見出すことができずにいたり、ささやかな居場所を守るべくほとんど身悶えせんばかりに苦闘している時などは、ほとんど救済の言葉のように感じられるかもしれません。
今週のあなたもまた、他者に向けた言葉を豊かにすることより、自身と内なる神とのあいだにほとばしる言葉にならない何かにスーッと焦点が合っていきやすいはず。