森口 何気ない会話の中でジェンダーの眼鏡を与えかねないので、気をつけています。例えば、こどもが新しい友達の話をしたときに、「それは女の子?男の子?」と聞いてしまうとか、クラス替えをしたら、「新しい担任は男の教員?女の教員?」と聞いてしまうとか。
中野 やりがちです......。知人がそれを聞いてしまい、お子さんに「その情報、必要?」と聞き返されたと言っていました。見ていない人をイメージしたいときに、私たち大人はまず性別から入ってしまいがちですよね。
森口 最初から「どんな子なの?」と聞けばいいだけなんですよね。性別は話題にしやすい側面がありますから、バイアスを再生産してしまいがちです。
今回、さまざまな行動や能力について、性差なのか思い込みなのかを明らかにしましたが、科学的根拠よりもわかりやすさのほうが勝つことがあると実感しました。「女性脳」「男性脳」といった本が売れるのは、一般的な性差の思い込みに近いため腑に落ちるという背景もあるのかもしれません。
中野 SNSでも「家事・育児で夫が使えない」という趣旨の個人の投稿がバズると、いつの間にか「生物学的に女性のほうがケアに向いている」という言説にすり替えられてしまったり。そうやって思い込みが拡散されていく危うさがあります。
ケアをする仕事がもっと評価されて、男女ともに選べるようになることも含め、ジェンダーだけでなく能力主義などさまざまな価値観をフラットにしていく必要性も感じています。
森口 生成AIの浸透で人間の役割が大きく変わろうとしているいま、性別によって進路選択や職業選択が閉ざされるのはもったいないことです。大人の思い込みが次世代の生きづらさを生まないよう、今後も発信していきたいです。
【前編】男の子は7歳から「男性=賢い」と感じている。女性管理職が少ない理由を小学生までさかのぼって考えた