9. 平成女児チョコ|食分野の “平成レトロ” ブーム
今年は、シール帳交換やルーズソックス、たまごっちなど、平成文化の流行りが目立ちました。そのなかでも、食の分野では「平成女児チョコ」の検索数が、2025年3月(検索数は約13万件)にピークを迎え、前年比1.68倍に伸長しました。
「平成女児チョコ」とは、平成初期から中期に小学生の間で流行した「友チョコ」文化の象徴とも言える “手作りデコチョコ” のこと。SNSでも「#平成女児チョコ」や「#友チョコ」といった投稿が散見されました。
当時を懐かしむ世代だけでなくZ世代をも巻き込み、単に作るだけでなく、この文化自体やノスタルジーを楽しむことが価値となりました。
結果として、2025年のバレンタインでは、実際に手作りする人が大幅に増え、平成レトロブームの重要な食カテゴリとして確立したといえます。
10. ドーナツ|アメリカン系とヘルシー系の二極化が進む
2022年から始まったドーナツブームは衰えることなく、2025年も引き続き大きな注目を集めました。
2025年5月には、LA発のドーナツブランド「ランディーズドーナツ(Randy's Donuts)」が代官山に日本初上陸し、連日行列を生むほどの話題となりました。1号店に続き、新宿、東京駅と続々展開したことで、アメリカンカルチャーを背景に持つドーナツの勢いを示しました。
一方で、福岡発のベーカリー「アマムダコタン」の運営会社が手掛ける「I'm donut ?(アイムドーナツ?)」は店舗を急増させ、勢いを加速させました。6月には初のグルテンフリー専門店、11月にはヴィーガン対応の専門店を展開し、素材にこだわる “ヘルシー系ドーナツ” の流れを後押ししました。
この年は、“アメリカン・ビッグ系” と “素材にこだわるヘルシー系”の二方向で盛り上がりが生まれたのが特徴です。
食のトレンドは「自由度」と「ノスタルジー」へ
2025年の食トレンドを振り返ると、目新しさだけでなく、その中心には「カスタムの自由度」と「ノスタルジー(原点回帰)」がありました。
マーラータンやヨアジョンの「選べる具材」や、ドバイチョコの「新しいザクザク食感」といった体験のカスタマイズに加え、せいろや平成女児チョコの「レトロな体験」などが顕著です。
SNS時代のユーザーは、ただおいしいだけでなく、自分好みにアレンジできる楽しさや、だれかと共有できるような体験価値を強く求めていることがわかります。
この流れは今後も加速し、よりパーソナルで、背景にストーリーを持つフードが、次なるブームを巻き起こすカギとなりそうです。
文/ 倉持 美香(macaroni 編集部)