2階と3階を見る。2つの床の途中に存在感のある梁があるため、スキップフロアと勘違いする人が多いという。
スラブがピン角でぶつかる部分はスチールで接合されている。
3階バルコニー。
和室のある3階スペース。
3階和室から見る。
厳しさとは真逆の居心地がいい
引っ越しをしてから1カ月という古澤さん一家。間仕切り壁のような存在感のある梁はモノを置く棚としても活用しているというが、はじめてチャレンジしたつくりの空間の中で古澤さんは「モノをどこに置くのかがまったく決まらなかった」と話す。「ようやく落ち着いてきましたが、いろんなところにモノを置いていいきっかけがあるから、しばらくの間、毎日のようにモノが移動していました」
家族の戸惑いは、古澤さんよりもさらに大きかった。「最初は開放的すぎて全部外につながっている気がして自分の部屋がないような感じがしました」と娘さん。しかし今は心地よい開放感に慣れて外の目が気にならなくなり、カーテンも開けて暮らしているという。
いろいろなプロポーションの開口部が外をさまざまに切り取って風景の変化を楽しませてくれる。
1階玄関内部から外を見る。壁と天井のスリットから光が入る。
1階。木のボックスの内部はトイレ。
階段越しに玄関のほうを見る。
階段途中から見る。梁とスラブが分離することで、通常ではありえないような外との関係性が建物のいたるところで生まれている。
古澤さんと息子さんの2人がいるのは梁の上。40×40cmの梁は棚としても使えるし、腰かけたりすることもできる。
奥さんも「家の中まで見えてしまうのかなと思っていたんですが、意外に見えないので、外からの視線はだんだん気にならなくなってきました」と話す。「あと、頭をコンクリートの梁にぶつけたりするととても痛いのですが、そうした厳しさとは真逆の居心地の良さがあってそれがとても気に入っています。コンクリートでなければ、このような快適な開放性は得られなかったんだろうなと」
奥さんは古澤さんに「狭い面積の中でバルコニーを広く取りすぎてもったいない」と設計中ずっと言っていたそうだ。しかし「外とつながって空間が広く感じられるし、よくあそこでお茶を飲んだりして楽しんでいるので、これで良かったなと思って」いるという。
設計で外を意識的に多く取り込んだ古澤さんもこう話す。「昨日も友人たちをまねいてバルコニーで食事をしたんですが、外というのはやはり気持ちがいいですね。外とつながっているというのは街とつながっているというのと同じなので、そのあたりの気持ちの良さに住んでみてあらためて気づいたような気がします」。古澤さんはまたこの気持ちの良さを「街と体験が一体化する」という建築家らしい表現でも伝えてくれた。
古澤邸
設計 古澤大輔/リライト_D+日本大学理工学部古澤研究室
所在地 東京都杉並区
構造 RC造
規模 地上4階
延床面積 90.59㎡