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職、住、街をゆるやかにつなぐ大屋根が生み出す庭&アウトドアリビング

インテリア

平屋の仕事場と2階建ての居住空間を大きな屋根でつないだY邸。そこから生まれた半戸外空間は、豊かな時間と地域とのつながりをもたらした。

大屋根が印象的な斬新な外観
文教都市・浦和の閑静な住宅街。戸建てが建ち並ぶ中、ひときわ大きな屋根が目に飛び込んでくる。小さな家型の平屋と、白くシンプルな2階建ての家を大きな切妻屋根でつないだ斬新な外観である。Yさんご一家がこの家で暮らし始めて2年が過ぎた。「中古物件を購入したため、ここには古い家が建っていました。取り壊して建て替えるにあたり、建築家を探し、出会ったのが井上玄さんです。井上さんの作品は、シンプルで格好よく、奇抜すぎないところが気に入りました。年齢も近く、家族構成も似ていたので、生活のイメージが伝わりやすいかなと思い、設計を依頼しました」。
自宅で仕事をするYさんがまず出したリクエストは、仕事場と居住空間を分けたいということ。また、敷地が三方道路に面しているため、庭から子どもが道路に飛び出す危険性を懸念し、子どもが安全に遊べる場所がほしいと伝えたという。その要望を受けて井上さんが提案したのは、仕事場と居住空間を離して配置しつつも大屋根でつなぎ、2階に半屋外空間を造るというもの。これは、子どもたちが自由に遊べる庭であり、ダイニングと一体となったアウトドアリビングでもある。
この半屋外空間は地上から約2mの位置に設置し、壁は視線を遮る最低限の高さに設定。開口を3つ設け、風と視線が抜けるようにしたことで、街に対して開放的でありながらプライバシーも程よく守られた心地よい空間となった。「こういう家は全く想像していなかったので、専門家の発想力はすごいと思いました」と、井上さんのアイディアにYさんも脱帽だったようだ。

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ピンクのレンガタイルが美しい家型の部分はYさんのオフィス、奥の白い家がYさん夫妻と2人の息子さん(7歳、5歳)が暮らす住居スペース。

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大きな屋根の下に登場したアウトドアリビングは2階に位置する。隣家の緑も借景に一役。

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玄関を開けると、土足で上がれる階段がある。昇りきったところからアウトドアリビングに出ることができる。

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アウトドアリビングへの出入り口手前、階段脇にあるシューズクローゼット内に洗面台を設置。部屋に入る前に手が洗えて衛生的。

譲り受けたレンガタイル
ピンクのレンガタイルが印象的な家型の平屋部分はYさんの仕事場。「雑誌を見ていて、このレンガタイルを使いたいと井上さんに相談したら、そのレンガタイル会社の社長と連絡を取ってくれて会わせてもらえたんです。交渉の末、“中途半端に余っているものなら売ってもいいよ”と譲ってもらえることになり、オフィス部分や住居スペースの一部に使っています。全部レンガにするよりも、ポイントに使うことで、かえってかわいい感じに仕上がりました」。
2階のダイニング・キッチンとアウトドアリビングの床は、譲り受けた白化粧タイルで統一。大屋根裏の軒天と屋内の天井はロシアンバーチ材を使用し、床とともに一体感を演出している。

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グリーンで彩られたオフィスへのアプローチ。シンボルツリーのアオダモは、夜にはライトアップされ、美しい葉の影が軒天に映し出される。

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色関係の仕事をするYさん。仕事柄、照明は大事とのことで、オフィスをはじめすべての照明は専門家にお任せした。作業台として使用しているのは、カール・ハンセン&サンの「PK52」。

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オフィスの扉は井上さんのデザイン。ドアに取っ手や鍵穴がなく、まるで窓のよう。フレームに手をかけて開ければよいのだが、どうやって開ければいいか、迷う人がほとんどだそう。

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フィンランドのガラスアーティスト、オイバ・トイッカのロリーポップシリーズがズラリ。バードシリーズ(右)は、住居スペースにも大小の鳥たちが置かれていた。

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オフィスにはミニキッチンやトイレ(左)も完備。右奥の階段から住居スペースへ。

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ダイニングから一続きのアウトドアリビング。床は白化粧タイルで統一。ダイニングテーブルは自作、ダイニングチェアはカール・ハンセン&サンの「CH88」。子ども用の椅子は、最初茶色だったストッケの「トリップトラップ」をYさんがペインティングした。

ホコリをためない部屋造り
「ホコリがたまりにくく、掃除がしやすい家というのもテーマのひとつ」というYさん。各部屋、ホコリ対策も万全である。家具はなるべく造作にし、ファブリック類は極力使用していない。キッチンには、吊り戸棚を設けず、キッチンボックスを造作。収納する家電のサイズを全て図り、ぴったり収まるようにした。
2階のダイニングから、存在感を究極まで抑えた極薄の鉄の階段を上がると、2.5階にあたるリビングフロアに。ホコリがたまりやすいソファを避け、フリッツ・ハンセンの「PK22」や柳宗理の「バタフライスツール」を置いた。ダイニング同様、レザーや木にこだわり、さりげなく名作たちを配置している。また、掃除機がかけやすいフローティングタイプの壁面収納には扉を付け、エアコンも収納の中に。ホコリ対策を徹底している。
畳の小上がりは、子どもたちがゴロゴロできるスペース。「最初、和室のキッチン側の建具はなかったのですが、住み始めてから心臓が飛び出るくらい危険だと感じ(笑)、慌てて自身がデザインしたものを取り付けてもらいました」。

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真っ白でシンプルなキッチン。カーブを描いた入り口がかわいらしいキッチンボックスには、冷蔵庫をはじめとした家電から食材、食器、給湯器類のリモコンまで収納。天窓からの光がスツールを美しく照らしていた。

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ダイニングからリビングへ上がる階段は、「できるだけ薄くしたかった」と踏板に鉄を使用。蹴込み部分は強度のためにやむなく半分設置した。手すりは1本のラインでつながっているようなイメージに。

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2.5階のリビングから2階を見る。床の白化粧タイルと天井までの大きな開口が明るい空間を印象づける。

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