正しい名刺の受け取り方を、受け取る準備からしまい方までマナ―講師の松本繁美さんが解説。複数人いる場合の交換手順は? 座ったままでOK? 名刺入れがない、名刺を忘れたときの対処法は? など迷いやすいポイントに触れながらレクチャーします。
松本繁美(マナーアドバイザー)
名刺とは、自己紹介のツールです。
はじめて会うとき、部署が変わった、転勤になった、転職したなど、新しい自分の状況を知ってもらうと同時に、相手を知るのにも必要なのが、この名刺。雑に扱うことはタブー視されており、「持ち主の分身」だといわれるほど、授受の際のマナーが気にされます。
あなたは名刺の正しい受け取り方を知っていますか? 今回はいざというときに困らない「名刺の受け取り方マナー」をおさらいしていきましょう。
なぜ名刺交換が必要?
そもそもなぜビジネスシーンにおいて名刺交換をするのか。名刺交換の必要性はずばり、2つあります。
1.会社名、部署名、会社のURL、名前、連絡先を伝える
2.名刺交換自体がきちんとできる相手なのかを見極める
相手の情報を得るのももちろんですが、それなら電子メールでのやりとりでも構いません。ポイントは「2.名刺交換自体がきちんとできる相手なのかを見極める」機会を担うということ。
名刺交換は、直接顔を合わせてあいさつするコミュニケーションの意味を含んでいます。電子上のやりとりではわからない「相手がどんな人間なのか」をお互いに知る、重要なやりとりなのです。
名刺は「持ち主の分身」だとされる理由
名刺は、自分や相手の名前を伝え合うだけのツールではありません。会社名や会社のアイデンテティなどを伝える手段でもあります。
したがって相手の会社(仕事)や、相手自身に対するリスペクト(敬意)を込めて扱わなければなりません。丁寧に扱うのが基本中の基本です。「分身」と呼ばれるのは、このようにそこへ書かれている情報以上の背景や意味を含んでいるからです。
マナー講師が教える「名刺の受け取り方」
ここでは、具体的に名刺交換の手順を見ていきましょう。
手順0:交換する順番の基本
交換手順を学習する前に、名刺交換の順番を知っておくとスムーズです。
上司や先輩など、その場に複数人居合わせた場合は、役職が上のものから名刺交換していく決まりがあります(相手側もこちら側も複数という場合は、役職が上の者同士から順番に行います)。
待っている間、部下同士で名刺交換をしてしまうことも慣例としてありますが、これでは相手側の部下と名刺交換したあとで、その上司と名刺交換をすることになり、正式なマナーとしては失礼にあたります。ただし、時間がなくやむを得ない場合や、上下関係がない場合などは、待たずに各自の間で名刺交換を行ってもOKです。
手順1:きれいな名刺を用意する
名刺交換が予想される場所へ行く場合、まずはきれいな名刺を携帯しましょう。
汚れがあったり、角がつぶれていたりする名刺は絶対にNG。それが自分自身を表すと考えたら、マナー違反であるのは一目瞭然です。
手順2:名刺交換は必ず立った状態で行う
直前まで座っていた場合でも、名刺交換のタイミングが来たら必ず立ち上がって行いましょう。また、間にテーブルやカウンターなどを挟むのもNG。間に何もない状態で交換します。
手順3:自分から名刺を出すよう心がける
名刺は目下の者が先に差し出すのがマナーです。できるだけ自分から名刺を差し出すようにしましょう。
ちなみに、訪問先から、というルールはありません。訪問先(応対側)か訪問側(こちらが訪問した場合)かは関係がなく、お客様は誰か、同等の立場なのかなどによって、上位者、下位者が決まるからです。どちらが下位者にあたるのかを認識し、下位者から先に上位者(目上の人)へ差し出します。
ただし、数秒のやりとりの中では相手が先に名刺を出してくる場合もあるはずです。形式にこだわりすぎてぎこちない授受になってしまっては本末転倒。臨機応変に対応するのが◎です。
同時交換をすることも多いので、その場合は自分の名刺を相手より低い位置で差し出すとベターです。