今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
不安の海を漕いでいく
今週のてんびん座は、「新しい世界に飛び出していきたいという気持ちが、不意に膨らんでいくような星回り」。
「わが夏帽どこまで転べども故郷」(寺山修司)という句で詠まれているのは、突然吹いてきた風に飛ばされた帽子をあわてて追いかけた場面。ここにはどこかホッとした安堵感と同時に、もう一つの相反する感情が気配のように漂っています。
すなわち、できれば故郷の外へ、まだ見ぬ新しい世界へとそのまま転がっていって欲しかったという願いと、それがかなわかったことへの失意です。
この安堵と期待の双方のあいだで揺れ動く混濁した意識は、どこか今のてんびん座にも通じるところがあるのではないでしょうか。今週のあなたも、これまではそこで安寧を得ていた心理や成長過程が、もはや終わりを迎えつつあることが実感されていくはずです。
今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
道草を楽しむ
今週のさそり座は、「軽みをもってこの世に浮かれていくような星回り」。
エーリッヒ・ショイルマンの『パパラギ』において、時間は「ぬれた手の中の蛇のようなもの」と例えられており、「私たちは、哀れな、迷えるパパラギを、狂気から救ってやらねばならない。時間を取りもどしてやらねばならない」と記されています。
確かに私たちは次から次に投げわたされる情報の処理に忙殺されて、肝心の頭やハートがお留守になってしまう「機械的金縛り状態」とも呼ぶべき事態にしばしば陥ってしまいます。
だからこそ著者がいうように、ときどき「小さな丸い時間機械を打ちこわし」てでも、一種の「わき見」をさせてハートを働かせてあげなければなりません。「わき見」というのは、想像力の喚起。今週は大いに道草を食っていく時間を楽しんでいきましょう。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
運気グルーヴ
今週のいて座は、「グルーヴに乗っていくことで、遠くまで行く勢いを養っていくような星回り」。
夏の気配が濃厚に漂い始めるのを待っていたかのように、揉めていたバンド名があっさり決まった。その喜びに任せて、まずはバスドラムに書いてしまおう。「夏めくやバンド名バスドラムに書く」(トオイダイスケ)という句では、そんな情景が詠まれています。
畳みかけるように繰り返された「バ」音によって、意味の連なりへの引きを音の押しだしが凌駕する形でグルーヴを作り出していく掲句は、そのまま音楽にかけた架空の若者の青春を凝縮したような一句といえます。
こうしたある種のうねりの感覚というのは運気においても非常に大切であり、「運がいい人」というのは、言ってしまえば「グルーヴのある人」のこと。今週のあなたもまた、もともと持っているグルーヴにうまく乗っていくことで、活路を見出すだけの自信と勢いを作り出していくべし。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
我も世界も流れゆく
今週のやぎ座は、「自分の人生全体を眺め渡していくような星回り」。
唐のはじめに生きた陳子昂(ちんすごう)は、政府の役人であると同時に詩人でもありました。北方の異民族の反乱への対応策を提出したところ、取り上げられるどころかむしろ身分を下げられてしまい、その無念さから『幽州台に登る歌』を詠んだとされています。
ひとりぼっちである自分は、天地の「悠悠」として永遠に微動だにしない姿に、思いを集中させる。そうして絶えず変化する人間である自分を思い、悲しみに打ち砕かれて、涙があふれる。
これはただみずからの不遇や不条理を嘆いているというより、もっと広く、人生全体、人間全体のついての感慨をうたったものであるように感じられます。今週のあなたも、これまで自分がどんな姿勢でこの世界と向き合ってきたのかということが自然と浮き彫りになってくるはずです。