今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
特になし
今週のかに座は、茫然とする技術を磨いていくような星回り。
無職は人を茫然とさせる。厳密には、無職になると自分が何者であるかわからなくなる。これはけっこう怖い感覚で、住むところや当面の生活費の確保など現実的な問題よりも、とりあえず行く場所がないとか、なんとなく顔を合わせる相手がいなくなると、自分だけが社会から取り残されたように思えてくるのです。
茫然とするコツとは、特に意味のない行為をゆっくり時間をかけて、できるだけ丁寧に行うこと。室内の暑さに任せて、アイスが溶けるのをただ何もせずに観察する。そういう“間”のなかに、スッと入っていくことが大切で、それが「(ただ)ゐる」という言葉で表現されていることなのではないかと思います。
今週のあなたもまた、あくせくと何かをすることで不安をかき消すのではなく、作者のように「ただゐる」時間を自分に馴染ませていきたいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
説明不可能な持続
今週のしし座は、意志と情熱を急角度で取り戻していくような星回り。
死後になって刊行された『内面の日記』によって、世界的に名を知られるようになったアミエルという人がいました。彼は少年の頃に孤児になり生涯にわたり独身でしたが、ひたすら孤独な自己の慰めに、自身の苦悩、苦しみ、悲しみ、寂しさを、三十数年にわたってノートに書き続けました。
そのノートには「この毎日の独白は、祈りの一形式、精神とその原理の談話、神との対話である」と記されていますが、これは長らく日記を書き続けた末にいたった境地なのでしょう。とはいえ、彼がそれほどまでに日記を続けられた原動力も、ある種の宗教的狂熱と言っていいでしょう。
今週のしし座もまた、アミエルほどではなくても、沈黙とともに自分自身と溶け合っていく、意識的な睡眠のような静かな時間を過ごしていくことを心掛けていくといいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
予感と開かれ
今週のおとめ座は、爛々たる無意識のうねりを肌で感じていくような星回り。
「風鈴の空は荒星ばかりかな」(芝不器男)という句では、夏の風物詩である「風鈴」が一斉にかき鳴り、その大音響の向こうには無数の星星がきらめいている情景が詠まれています。
わずか27歳で病没した作者がこの句を作ったのは23歳の頃。既にこの時には自身の残り短い命運をどこかで察知していたのかもしれません。それほどに、普通とは違う光景が作者には見えていたし、それは一見偶然のようであってもただの偶然ではなかったのではないでしょうか。というのも作者はその静謐な作風とは裏腹に、どうやら相当に激しく熱い詩魂の持ち主だったことが伺えるのです。
今週のあなたもまた、ある種の予感めいたビジョンが眼前に開けてくることだってあるはず。そのためにも、心の奥底で密かに願っている願いをどうにか言語化していくことを心がけていきたいところです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
伝承と復活
今週のてんびん座は、良くも悪くも受け継がれた記憶を、からだの中に持っているということを感じていくような星回り。
現代社会が失ってしまったものの一つに、わらべ唄があります。子どものために歌う、子ども用の唄で、その多くは親から子へ、祖父母から孫へと伝えられてきたものでした。
例えば、子どもたちが学校の遊び時間に「せっせっせ」や「小豆たった、煮たった」をし、下校後には道で「通りゃんせ通りゃんせ」をしたり、「鬼ごっこ」をするのでも、鬼のいぬ間に洗濯じゃぶじゃぶとうたって鬼をからかっては遊ぶ。そんな光景は、もはや日本中どこを歩いても見かけることはほとんどないはずです。
今週のあなたは、そうした大人になった今ではすっかり忘れてしまっていた記憶が、うっすらと甦ってくるような感覚に不意に直面していくことになるかもしれません。