今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
こころの割り算
今週のさそり座は、新しいことをするにあたっての気負いを、ふるい落としていくような星回り。
「野ざらし」とはしゃれこうべ、つまり風雨に曝された頭蓋骨のこと。「野ざらしを心に風のしむ身哉」(松尾芭蕉)は、どこかに行き倒れて野ざらしになるかもしれない、そう思うと我が身に風が冷え冷えと沁みるようだと、旅立ちにあたって悲壮な決意を示す句です。
しかし江戸時代は治安も安定し、東海道であれば命懸けという心配も少なかったはず。おそらく掲句は芭蕉なりのおどけであり、ユーモアなのでしょう。あるいは旅をそれほどに命懸けのものであったことを忘れないようにしたのも、芭蕉が理想とした中世の隠遁者たちの一種のコスプレだったのかもしれません。
この旅の一番の目的は、久しぶりに故郷の伊賀上野に帰ることでした。江戸に出て10数年、芭蕉は前年に亡くなった母の死に目にも会えなかったことを考えると、42歳なりの照れ隠しだったようにも思えてきます。あなたもまた自分のなかの心残りや叶えたい願いを、できるだけ力を抜いて思い浮かべてみるといいでしょう。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
堅苦しいものは燃やしちゃえ
今週のいて座は、恥ずかしくも真剣な衝動があるなら、それに堂々と身を任せていこうとするような星回り。
映画『スクール・オブ・ロック』のストーリーは、ある意味で働く大人たちへの風刺にもなっているように思います。例えば、職場や自身のキャリアの文脈で「ミッション」なんて言葉を使おうものなら、すぐに「ソーシャルグッド」なんて言葉が出てきて、どうしたって立派で大人びたものでなくてはならないような気がしてくるはず。
そんな時に、主人公が生徒たちに対して「ひとつのライヴが世界を変える。それがロックンロールのミッションだ!」と息巻くシーンを思い出すと、そうか、バンドというものが表現であると同時に事業であるならば、個人のミッションだってもっとロックンロールでいいはずだと思えてくるのです。
だいたい、必死になって見つけ出した「課題」の「解決」なんて、やるだけつまらないでしょう。あなたもまた、もっと肩の力を抜いて自身のミッションというものを捉えなおしていくことがテーマなのだと言えます。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
散り際の美学
今週のやぎ座は、何かの終わりつつあるさまを、明るく透き通った目で見つめていくような星回り。
「冬麗の微塵となりて去らんとす」の作者・相馬遷子は長野生まれの医師。掲句を詠んだ頃は自身も癌におかされ、近づいてくるみずからの死と対面していました。しかし、掲句には死を前に恐れや不安に心をかき乱されている様子は微塵もうかがえないのです。
うららかな冬の晴天の景色の中で、きらきらと乱反射している「微塵」となって私は去ろうとしているというこの句の感慨には、甘い感傷も、人目を惹くような幻想も込められてはいません。作者はただ目に映ったものを、あるがままに見つめている。ここにはその透徹した認識だけがあり、決して見ることのできない死を確かにその後ろに背負っているような気配を漂わせています。
そして次第にその“目”は大地を離れ、やがて冬空の彼方へと消えていくのでしょう。そこには、人がとりうる散り際の一つの理想形が示されているように思います。あなたもまた、自分がもはやこれまでの自分ではなくなりつつあることの自覚を着実に深めていくことになりそうです。