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江戸ソバリエが解説!年末の風物詩「年越しそば」の由来とは?

お師匠さんも忙しくて思わず走ると書いて、師走。忘年会やら大掃除、年賀状書きなどを終えて大晦日にいただくのが年越しそばです。細く長くという、庶民の切ない願いが込められているのはご存知の方も多いでしょう。その由来を改めてご解説いたします。

shucyan

大晦日は、やっぱり年越しそば!

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日本人にとって、大晦日の行事と欠かせないのが「年越しそば」です。普段はあまりそば屋さんに行かない人でも年末になると、こぞってそば屋さんに向かいます。除夜の鐘の音を聞きながらカップ麺をすする人もいるでしょう。日本ですっかり定着した「年越しそば」の秘密を探ってみましょう。

年越しそばとは

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年末になると日本人の多くが、こぞっておそば屋さんに出向きます。その目的は「年越しそば」です。麺類を食べる文化は世界中にありますが、大晦日にパスタやラーメンを食べる風習などは聞いたことがありません。日本独自の風習である「年越しそば」について、その歴史をふまえながら、ひも解いていてみましょう。

▶その意味は?

年末の風物詩となっている大晦日に食べる年越しそばですが、実はその意味には大きく分けて2つがあります。

そばはグルテンを含むうどんなどの他の麺類とくらべて切れやすいので、一年の厄を断ち切るという意味で、江戸時代から大晦日の夜に食べる風習が生まれたとされています。その一方で、常に何が起こるかわからない危うい人生だからこそ、切れやすいおそばになぞらえて、生命や財産を「細く長く」繋げたいという願いも込められているのです。

▶その歴史は?

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そばの実はお米や小麦の栽培に先立って、古代遺跡の出土物から縄文時代後期には既に食用とされていたと考えられています。そばの実は粉に挽けば、水やお湯で延ばして「そばがき」の状態にすれば、炊いたり発酵させたりという面倒な調理を必要とせずに食べることができました。

ただし、グルテンを含んでいないそばは粘性が低くて麺に加工するのは難しく、今のような「そば切り」が一般に広まったのは江戸時代中頃のことです。時代劇でおなじみの赤穂浪士(あこうろうし)が、討ち入り前夜に集まったとされるのもおそば屋さんだったそうです。

▶そばを英語ではなんという?

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これは中学や高校では教わりませんでしたね。お米はライス、小麦はwheat、小麦粉はflowerまたはwheat flourと言います。そばは“buckwheat”です。欧米では小麦の1種と捉えられているようですが、植物学的には大きく異なります。

穀物の大半がイネ科であるのに対して、そばはタデ科の植物であり、小麦粉のように粘りの成分であるグルテンを含みません。だから、そばを使ったお料理としては、フランスのガレットやロシアのカーシャ(粥)、イタリアのそば粉入りのパスタ、韓国の押し出し式の冷麺などに素材として世界中で使われていますが、そば粉を主体とした手作業による麺作りは日本独自の技なのです。

年越しそばの由来(起源)

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▶健康祈願説

年越しそばとは大晦日の12月31日に縁起をかついで、おそばを食べる習慣のことを言います。そばは長く伸ばし細く切って作る食べ物なので、細く長くということから健康長寿や家運長命などの縁起をかついで食べるようになったというのが一般的です。

▶延命・長寿祈願説

そばは、細く長く伸びることから、「長寿延命」「家運長命」などの縁起をかついで食べるようになったという説があります。引越しそばの「末永くよろしく」という意味も同様な意味があります。

▶金箔を集める縁起物説

金銀細工師が、散らかった金粉を集めるために使っていたのがそば粉を練って丸めたものです。そこから「金を集める縁起物」「金運を呼ぶ」という意味合いから、新年の金運向上のために食されるようになりました。

▶旧年の苦労や借金を捨てる説

切れやすいそばは、旧年の労苦や災厄を切り捨てて新しい年を迎えることを願ったとする説があります。「縁切りそば」「年切りそば」とも言います。借金を打ち切る意味で「借銭切り」「勘定そば」とする説もあり、この場合は必ず残さずに食べなければいけません。

▶「世直しそば」由来説

鎌倉時代に創建された「そば・うどんの発祥の地」として知られる博多の承天寺では、年の瀬を越せない町人のために「世直しそば」として、そば餅を振る舞ったところ、翌年からそれを食べた人に運が向いてきたという伝説があります。そこから、大晦日に「運そば」を食べる習慣が生まれました。「運気そば」「福そば」とも呼ばれます。

年越しそばは、いつ食べる?

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年越しそばは年末のニュース番組で紹介されるように、当日の営業時間内の昼や夕方の他、ご家庭では深夜の除夜の鐘を聞きながら食べられています。「今年一年の厄を断ち切る」という意味では、年を越さない内に食べるのがその意味に合っているでしょう。

福島県の会津地方では「元日そば、二日もち、三日とろろ」という言葉があり、年が明けてからそばを食べる習慣が一部で残っています。この地域では大晦日には、根菜や里芋・こんにゃくを「ざくざく」と一口大に切り、煮干やスルメで出汁をとって醤油で味を整えた福島の郷土料理である「ざくざく煮」を食します。

新潟県でも大晦日でなく元日や1月14日(小正月の前日)にそばを食べる「十四日(じゅうよっか)そば」といった風習もありましたが、次第にすたれつつあるようです。

▶年越しそばの食べ方

おそばであれば、一般的には特に種類や食べ方に決まりはありませんが、縁起物だけにいくつかの品目については意味があるようです。

1. 子宝に恵まれたいなら「にしんそば」
  にしんは「二親」と読めるので、子宝に恵まれるようにと縁起を担いで食されます。
  主に関西でおなじみのメニューです。

2.そばには欠かせない「ネギ」
  おそばには薬味や具材として欠かせないネギは、労を労うという語呂があります。

3. 大根おろし
  「厄を落とす」という意味合いがあります。殺菌や消化促進効果もあり、身体によい
  食材として知られています。

4. 鶏肉
  朝早くから鳴く鶏の声は、縁起が良く、おそば屋さんの食材としても定番です。

5. 海老
   海老は、おめでたい赤い色に加えて「腰が曲がるまでの長寿」を意味します。おそば   との相性も抜群です。

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