おすまし顔の猫がマスコットの香川県高松市にある自家焙煎コーヒーのお店「プシプシーナ珈琲」。世界中のコーヒー豆の中から店主が「これだ」と思うものを厳選し、じっくり丁寧に焙煎。思わずパケ買いしたくなる猫のイラストとともに全国に広まり、たくさんの愛好家を生み出している「プシプシーナ珈琲」に行ってきました。
「プシプシーナ」ということばの響き
お店の名前となっている「プシプシーナ」のネーミングは、ムーミンの原作者のトーベ・ヤンソンさんのお母さんが飼っていた猫の名前から。店主の登尾紘子さんは「プシプシーナって語感が変だし、ことばの響きが気に入って。イラストのモデルは昔飼っていた猫なんです」と、ロゴもパッケージも自らがデザインしています。猫のイラストは、登尾さんが昔飼っていた、ちょっぴりたくましくて筋肉質だったメス猫がモデルになっているのだそう。高松市出身の登尾さんは美大進学のために上京し、卒業後は独立して「プシプシーナ珈琲」をオープンするまで、パッケージやグラフィックなどを手がけるデザイナーとして活動していたといいます。
いろんなことにチャレンジしていきたい
今年で14年目を迎えるプシプシーナ珈琲。ちょうど5年前、高松市内の住宅地から現在の港に面したロケーションに移転し、大きな平屋の一軒家でオープンしました。カウンターを備えた店内では焙煎したコーヒー豆を販売。コーヒー豆を購入する前には、カフェメニューから気になるコーヒーを選んで、テイスティングを兼ねて味わってみたりして、お好みの豆を見つける楽しさもあります。プシプシーナ珈琲のオリジナルなど、コーヒー関連のグッズも取り揃えていますよ。
「お店がある場所は工場地帯なので、豆の焙煎の匂いも周辺に気兼ねなく作業できるのが良いですね。もともとは豆の焙煎と販売がメインで、カフェスペースはあくまでも豆を買いに来たついでに飲み比べできるような試飲所として考えていました。ありがたいことに、コーヒーを飲みに来るお客さんが多くて、店内も手狭になってきているので、今後はカフェスペースを拡張することも考えています」と登尾さん。
大切なのは毎日飲めること
思わずパケ買いしたくなる猫のキャラクターのデザイン。もちろん、味にもこだわり、全国のファンを惹きつけてやまないコーヒーです。大学時代には美大で彫刻を学んでいたという登尾さんは「私が学んでいた彫刻科って、工房が寒い環境にあり、外にヒーターを置いて制作の合間に必ずコーヒーを飲む時間があったんです。どちらかというと、私は彫刻よりもコーヒーの方にはまっていったんです(笑)。もともと豆を煎るのが好きで、大学ではコーヒー同好会を立ち上げて趣味で焙煎をやっていました」。
そんな登尾さんが豆の焙煎で一番大切にしていることは「まずは、じぶんが一番飲みやすいと思えること」なのだそう。豆自体の味が割とわかりやすくて、焙煎は適度な火入れしかしないことで、日常的に飲めるようなコーヒーを目指しています。
「サードウェーブ以降は浅煎りが主流になってきたり、その反動で深入りを飲む人も多いなど、コーヒーの味が両極端になってきているように思います。どちらかといえば、プシプシーナ珈琲はニュートラルなところを目指しています。あまり過度なこだわりはなく、その都度、毎日の湿度などと相談しつつ、飲みやすいバランスで仕上げるようにしています」と登尾さん。著者の私がプシプシーナ珈琲で味わったのは、モカベースの「スペシャル」と、登尾さんおすすめの「トーべ」の2種類。「スペシャル」は香りや爽やかさを求める人にぴったり。「トーベ」は強い苦味や酸味はなく、老若男女が飲みやすいようバランス重視で仕上げているそうですよ。
プシプシーナ珈琲ならではの楽しみ方
コーヒーとともに人気なのが、コーヒーの付け合わせにと登尾さんが開発した「ショウガトウ」(864円)。原料には高知産の生姜を使用し、外はカリッとした歯ざわりですが、寒天が入っているのでグミのような食感が特徴です。もともとショウガトウという名前の食べ物はあるものの、レシピがあったわけではなく、プシプシーナ珈琲のオリジナルで作ったそう。登尾さんは「お店を始めて3年間は暇を持て余していた時期があり、とにかく商品開発をしなければと思っていて(笑)」と、笑いながら話します。今では地元の駅や道の駅などでも販売しているそうで、そこから人気に火がついたのだとか。コーヒーとともに、ショウガトウを味わうことは、プシプシーナ珈琲ならではの楽しみ方のひとつ。ネット販売をしているので、まずはご自宅で気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。
photo / プシプシーナ珈琲、渡邊 孝明
プシプシーナ珈琲
香川県高松市朝日町2丁目19-16
TEL 087-822-7332
営業時間 11:00〜18:00
定休日 水・木曜