今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
仔猫と葦笛
今週のさそり座は、からだの声に自然と従っていくような星回り。
今では珍しいものになりましたが、ひと昔前までは麦ごはんをよく食べたのだと言います。むろん、人に飼われる犬や猫にしても事情は同じで、「麦飯の麦こぼしゐる仔猫かな」(後藤夜半)は、皿に盛られた麦のご飯を食べこぼしている仔猫の様子を描いたもの。
この世の食べ物に慣れていないけれど、勢いはすごい。仔猫はその旺盛な食欲によって、自身の命をこの世に繋ぎとめようとしているのかも知れません。ネット上でもよく仔猫の画像や動画はあげられますが、彼らは必要としているものをはっきりと認識し、全身でそれを欲しているという点で、自分が何を必要としているのかも分からなくなってしまった人間よりも、生きものとして輝いていると言えるのではないでしょうか。
人間であれ猫であれ、そうして真に必要なものをいただいて命そのものを燃焼させる時にはじめて、本当の意味で人生は始まっていくように思います。あなたもまた、ひとつそんな仔猫になったつもりで過ごしてみるといいでしょう。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ほどかれた胸のカタルシス
今週のいて座は、思い込みを冷ましてこじれた文脈を少しでも糺していこうとするような星回り。
「変」の旧字体「變」は漢字語源辞典によれば、上部の「䜌」はもつれた糸(絲)を分けようとする様を表わし、下部の「攴」は不安定で変わりやすい様を表わしており、そしてこれと同じ構成の字に「戀」があります。つまり「戀(恋)」とは、二本のもつれた糸が一つの言葉をはさんで、ちょっとしたことで白が黒になったり、善が悪になったりとするような事態を言うのではないでしょうか。
一方の糸から出た言葉が他方にはひっくり返って伝わっていく。いったんもつれると解くのは容易ではなく、やりとりをすればするほど互いの思い込みに輪がかかり、最終的にこころがすっかり裏返ってしまう。では言葉などない方がいいのか。然り、なしでも済むのなら、ないに越したことはないでしょう。
例えば、痴情のもつれで相手に何か言われたとしても、黙って相手を見つめるだけでいい。言いたいことを言わせておいて、最後に横を向いて煙草の煙を一吹きするか、そっと肩に手をおいて引き寄せればいい。あなたは、何と向かえど相手を変えようとするのではなく、まず自分自身を変えることで「戀」をほどいていくといいでしょう。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
新旧の現実がせめぎあう
今週のやぎ座は、これまで捨てきれなかった思いを手放していこうとするような星回り。
「むしつてもむしつても捨(すて)春の草」(小西来山)は、冬のあいだ枯れた草の下から、若草がむしってもむしっても惜しくないほど萌え出ている。そんな早春の光景を詠んだ句です。
作者は江戸時代初期の人で、家族に次々と先立たれたのだと伝わっていますが、どこか句全体に屈折した空虚さのようなものが感じられるのは、そうした作者の背景と相通じているのでしょうか。決して元通りになることがないながら心惹かれるかつての現実と、今まさにつくり出されたばかりの心許なくもすべてが目新しい現実。
二つの現実が溶けあいながらも、次第に後者に比重が移っていきつつあることを、作者もひしひしと実感して、だからこそやりきれない気持ちでいるのではないでしょうか。あなたもまた、新旧の異なる現実が入れ替わっていきつつあることを実感していくはず。