夏夏夏夏ここ夏〜!うきうきするレジャーシーズンよ〜。
とはいえ、暑さにコリゴリな人、カルチャーをインドアで楽しんじゃいましょう。今回は映画『グッバイ・ゴダール!』でゴダールの妻役を演じたステイシー・マーティンにインタビュー!
ゴダールって天才? クズ男?
フランス映画の巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督と2番目の妻アンヌ・ヴィアゼムスキーの出会いと別れを描いた『グッバイ・ゴダール!』。その時代背景が、“ヌーヴェル・ヴァーグの旗手”と称された巨匠の台頭期からその作風にも多大な影響を与えた五月革命勃発時まで、となれば、映画ファンにとっては興味がつのる。もっとも先鋭的だった巨匠の素顔が垣間見られるのだから。が、主人公は、あくまで『中国女』(67)のヒロインに19歳で抜擢され、即、結婚をしたアンヌ。
「もちろん、アンヌ役に決まったときはプレッシャーだった。なにしろ“あの巨匠のミューズ”だから。でも脚本も手がけたアザナヴィシウス監督は、最初に“これは伝記映画ではなく、コメディ映画”と宣言。それを聞いて、すっと重荷がなくなったの」
ミシェル・アザナヴィシウス監督は、無声映画『アーティスト』(11)でアカデミー賞の作品賞、監督賞をはじめ5部門を制したフランスの俊英。アンヌを演じるのは、2013年のラース・フォン・トリアー監督作『ニンフォマニアック vol.1』で、シャルロット・ゲンズブールが演じたヒロインの若き日をエロティックに表現し、衝撃的なデビューを果たしたステイシー・マーティン。今作でも純真な10代が刺激的な愛とできごとを経験して、大人の女性へと羽ばたく姿を、寡黙な演技で見事に演じている。
「ゴダールは妻より17歳も年上で、知識も経験も豊富。だからのべつまくなししゃべって、しゃべって、しゃべり倒している(笑)。じつは、最初に脚本を読んだときに、アンヌのセリフが少なくて悩んだの。でも監督のアドバイスもあって、気づいたわ。あのマシンガンのように浴びせられる言葉に対して、受け身ではなかった。彼の言うことにちゃんと耳を傾け、反応し、色々なことを吸収。徐々に大人の女性として孵化していったの。それが五月革命によって弾け飛んで、ゴダールの枠からはみ出るほどに成長してしまった。そういう変化を“居る”ことだけで表現するのが私の役目だったわ」
なるほど、初めは尊敬と憧れ一色だったアンヌのまなざしが、中盤から違った色、輝きに変わる。困惑、嫌悪、怒り、そして愛……。自分の頭と心で考える女性に成長しているのが感じられる。
「私の解釈では、このキャラクターはアンヌだけではなく“ゴダールのミューズ”と称された女性達の要素の複合体。さらには年上の男を愛した女性達の思いや経験が詰め込まれている。いわば普遍的な愛の物語だから、女性にとっては“あるある”エピソードがいっぱいだと思うわ」
目の前のステイシーは、スリムで長身、真っ白な肌の持ち主。とかく個性をアピールする女優陣には珍しく、無色透明な雰囲気。う〜ん、だからこそ、フォン・トリアーやアザナヴィシウスといったアーティスティックな監督の創造力を、かき立てるのだろう。“自分の色に染めたい”と……。まさに新世代のミューズの誕生!?
【Profile】
Stacy Martin/ステイシー・マーティン
1991年1月1日、フランス・パリ生まれ。ヘアスタイリストの父親の仕事のため、7歳から13歳まで東京・護国寺で暮らしていた(日本語は話せない)。21歳でラース・フォン・トリアー監督作『ニンフォマニアック Vol.1』でシャルロット・ゲンズブールが演じる主人公ジョーの若き日を熱演。その後『シークレット・オブ・モンスター』(15)、『五日物語 3つの王国と3人の女』(15)、『ハイ・ライズ』(16)などに出演。15年にはMiu Miuのフレグランスの広告にも起用され活躍の幅を広げている。
『グッバイ・ゴダール!』
【Story】
19歳のアンヌ(S・マーティン)は、気鋭監督ジャン=リュック・ゴダール(L・ガレル)と恋に落ちて結婚し、『中国女』の主役にも抜擢された。刺激的な日々を夢中で過ごす彼女だったが、やがてゴダールは革命に傾倒し、五月革命が勃発するが……。
監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ルイ・ガレル、ステイシー・マーティン、ベレニス・ベジョ ほか
配給:ギャガ
公開:新宿ピカデリーほか 全国順次ロードショー
© LES COMPAGNONS DU CINEMA - LA CLASSE AMERICAINE - STUDIOCANAL - FRANCE 3.
(sweet編集部)
取材・文:金子裕子
写真:© Yoshiko Yoda
ヘア&メイク:YOSHi.T (AVGVST)
編:坂野和泉 (vivace) , FASHION BOX
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