今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
どこまでも限りなく
今週のかに座は、いつも以上に深く遠くへと思考をずらしていくような星回り。
翼は2つの意味をもちます。第1に、大地の重力からの解放、重苦しい地上の掟からの自由自在。第2に、おのれの欲するところへ翔け行きたいというエロス的願望。翼は第2のエロス的願望に傾くにつれ、明確な志向性の表現となり、翼をもって羽ばたかずにはいられなくなるのです。
古来、メソポタミアやシュメールの神話では、死者は飛び去りゆく鳥として描かれていましたが、それは人が死ぬとき、最後の吐息とともに魂が口を通って出てゆくからなのかも知れません。
今週のあなたもまた、文字通り息の切れるところまで想いを飛ばしてみるつもりで過ごしてみるといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
いのちの重なり
今週のしし座は、死にきれずに残ったものを改めて受け取っていくような星回り。
「白魚をすすりそこねて死ぬことなし」(斎藤玄)の「白魚」とは、おそらく生きてそのまま飲み込むような踊り食いのそれなのでしょう。末期の大腸がんだった作者は、それをうまくすすれなかった。それは、飲み込まれてしまう小さな命を憐れに思ってしまったのかも知れません。
そのうえで、失敗してもなお死ななかったことに驚いているのです。頼りなくも確かにここにある生のふしぎな手触りに、改めて「死ぬことなし」と感じ入っている。そして、奇跡的に難を逃れた白魚といまの自分の境遇がまったく同じであることに気付いたのでしょう。
今週のあなたもまた、ふとしたことからみずからの生が別のシーンへと切り換わったことに気が付いていくかも知れません。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
深い深い谷をはさんで
今週のおとめ座は、おのれの切望を橋へと変えてゆこうとするような星回り。
戦前に刊行された保田与重郎の『日本の橋』いわく、西欧の橋が頑丈な石造りなのは、そこを征服者が大勢の軍隊とともに移動するための便宜であるのに対し、日本の橋は木の橋や吊り橋で、弱くて哀れな造りになっているそう。
これは村人や旅人が川を渡るために造ったという程度のもので、両者はたんに素材が違うだけではなくて、橋というものの目的意識そのものが異なっており、日本の橋はその弱弱しさにこそ特徴があるのだと言うのです。
今週のあなたもまた、やがて朽ち果てるはかなさを湛えた道として、誰か何かへと橋を架けてゆくべし。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
惜しみつつ手放す
今週のてんびん座は、心のどこかでひっかかっていたもののフックが取れていくような星回り。
「雛しまふ跡に掃(はか)るる花色々」(炭太祇)で詠まれているのは、雛飾りを片付けたあと、座敷を掃いているところ。当然、実際に「色々」の花があるわけではありませんが、お雛さまの形見と思えばこそ、ちりやゴミでさえ花びらのように見えたのでしょう。
どんなものであれ、賑やかなものというのは、なぜか侘しさがつきまとう。「色々」なものを、人は「花」として受け取っては、いつまでも始末をつけることができずに心の隙間に溜めてしまう。何か誰かを心から「惜しむ」ということは、そういうことなのかも知れません。
今週のあなたもまた、もし心から失うことが耐えがたいと感じているものがあるならば、それが何らかの形であぶり出されていきやすいでしょう。