ならまち散歩で目指す店の候補として挙げる人の多い「カナカナ」はおよそ築100年の奈良町家で昼、夜変わらず内容盛だくさんのおいしい定食が食べられるお店です。古の息遣いを感じる奈良町家に並ぶマトリョーシカなどのロシア雑貨もセンスに溢れていますよ。
ならまちの人気店「カナカナ」の魅力に迫る、その1 建物
元興寺旧境内を中心とした地域「ならまち」。駅からは少し離れますが「カナカナ」があるのは、元興寺の西、公納堂町という、かつて禅定院(元興寺の境内にあった小さな寺)の公納所があった場所で、いわば「ならまち」の中心的なエリア。このあたりには、「カナカナ」と同じように古いたたずまいの家屋が多く残り、時の流れが止まったような懐かしい景色がそこかしこに見られます。
オーナーの植島さんにこの物件との出合いを伺うと、空き家になっていた2階建のこの古民家を初めて内見に訪れたときは、おどろおどろしいほど古めかしく「薄気味悪い」とすら思ったそうです。
でも、中をよく見ると家を構成するパーツのひとつひとつに趣があり、「手入れをしたら変わるかもしれない」そう感じたそうです。そこから往時の姿を復元するように、丁寧に掃除をし、清拭きして学生の頃からの夢だったカフェを始めました。
明治期までの町家に特徴的な厨子二階(つしにかい)の開口部には格子が嵌め込まれており、かつてハシリニワがあった部分には、吹き抜けの火袋があり、おくどさんの名残もあります。白壁に塗り込められた柱も町家ならではの風情があります。
テーブルや椅子はレトロで、かつ、身近な空気を漂わせるものを選ばれており、なんとなく懐かしい気持ちにさせてくれます。
ならまちの人気店「カナカナ」の魅力に迫る、その2 食事
奈良町家の雰囲気はもちろんリピーターを惹きつけるのが昼も夜も同じ値段で提供される「カナカナごはん」。この日の内容は、タラの唐揚げ和風トマトソース、えのきと小松菜のおひたし、豚とトマトの坦々湯豆腐、柿の白和え、こんにゃくの含め煮、高菜のせご飯、味噌汁、ルビーグレープフルーツの寒天。酸味、甘み、ピリ辛さ、さまざまな味覚をバランスよく味わえる構成です。
さらに食後の飲み物にコーヒー、アメリカンコーヒー、紅茶、7種類のハーブティーの中から好きなものを1つ選べます。この内容で1595円。観光地のならまちにおいて驚きの良心価格です。しかも、昼も夜も同じ値段。リピートする人が多いのも納得です。
さっそく実食。メインの「タラの唐揚げ 和風トマトソース」。生のトマトを丁寧にピューレしてソースに仕立ててあります。だからソースと呼ぶよりもスープといったほうがよいくらいやさしい味。一滴残らず飲み干したくなります。
そして植島さんが大事にするのは料理のぬくもり。メインディッシュはもちろん副菜でも温かく食べたほうがおいしいものは温かく。冬に近づくにつれて温かい料理が増えていきます。
例えばこの日の一品の中だと「えのきと小松菜のおひたし」。もちろん冷たくてもおいしいのですが、日に日に寒くなってくるこの季節、一品の小鉢が温かいのはとてもうれしいことです。ほのかに香る柚子の風味も上品で、すべての料理が手抜きなく丁寧に作られていることがよくわかります。
ここも見たい、あの店も見たい、と予定どおりには動けないほど魅力的なならまちだから、どんな時間でも同じものを同じ値段で食べられるようにと「カナカナごはん」は通し営業の営業時間中、いつでも注文することができます。ならまちを旅する旅人の気持ちに寄り添ってくれるステキなお店です。
ならまちの人気店「カナカナ」の魅力に迫る、その3 スイーツ
「カナカナ」といえば、フォトジェニックなデザートがSNSで人気なのですが、今回ご紹介するのは王道の真っ白なチーズケーキ。白いチーズケーキといえばレアチーズかなと思いますが、レアではなく、そしてベイクドでもない。3時間かけて蒸し焼きにした手間のかかったチーズケーキです。
濃厚、でも重すぎない。レアとベイクドの間のようなチーズケーキ。しっかりとしたかたさもあり、まったりとし食感がクセになりそうです。
姉妹店に自家焙煎コーヒーを提供する「BOLIKCOFFEE(ボリクコーヒー)」がありますが、こちらのコーヒーは開店当時のまま岐阜の「milou(ミル)」の焙煎豆。常連さんが味が変わって悲しまないようにとの心遣いです。