今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
思考以前の世界
今週のかに座は、正解や方程式から始めるのでなく、まず飛び出してくる「振る舞い」に浸りきっていくような星回り。
マルチな活躍を続ける坂口恭平は『現実脱出論』のなかで、ひとつの詩や音楽やビジョンになっていく「風」のようなものを「死者からの付箋」と呼んでいました。
それは「太古からの人類の本能のようなものが伝達されている瞬間」であり、「突然どこか異国のラジオの電波が間違って入り込んだような感触」とともに訪れ、坂口の場合はそれが自分を貫くと「言葉にしたいというエネルギーを持ち」、「勢いよく歩いたり、人とより会おうとしたりする」のだと言います。
あなたもまた、周囲に怪しまれようと邪険にされようと、皮膚で感じとった何かがあるのなら、まずは体を動かし、よじり、ふるわすことを大切にしていくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
とっぱづれる
今週のしし座は、世間基準というより、あくまで自分にとってちょうどよく感じられる立ち位置におさまっていくような星回り。
『なの花のとつぱづれ也ふじの山』(小林一茶)という句のごとし。「とっぱづれ」とは新潟地方の方言で、ほんらいは「過失」の意。そこから「(あるべき位置や正しい場所から)はずれる」の意で使われ、何を間違って「とんでもなくはずれやがってぇ」くらいのニュアンスを含むようになった言葉。
どこか頓珍漢さをなじるようなニュアンスのなかに、まさに頓珍漢として生きた自分自身の肌になじむものを感じていたのかもしれません。
あなたもまた、そんな「とつぱづれ」な視覚に佇んでみるといいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
関係性の掘り出し
今週のおとめ座は、「ケア的である」ことの中に、ひとつの可能性を感じていくような星回り。
日本は世界一の長寿国であると同時に、世界一少子化が進んでいる国でもあり、多和田葉子の小説『献灯使』は、そんな日本社会の特質を縫い合わせたような作品となっています。
東京に住む108歳の老人作家の義郎が、身体が不自由でつねに微熱を発しているひ孫の無名(むめい)を育てるという特異な設定の物語。義郎は無名のことを、事あるごとに迷いつつも絶妙なバランスでケア的であろうとしていくのですが、それを象徴しているのが義郎が無名を育てる覚悟を決めたシーンでした。
あなたもまた、より動的な倫理的振る舞いとしてのケアということを、自身の身近な文脈に取り入れてみるといいでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
美的瞬間のほの暗さ
今週のてんびん座は、どうしたって割り切れない実存の輪郭を指でなぞっていくような星回り。
『うつむけば胸翳りたる芽花かな』(藤井あかり)という句のごとし。掲句は、明るく変わりゆく風景に逆行するように、気持ちが塞ぎこみ、暗くなっていく心理を巧みに描き出した一句。
「胸翳りたる」という静謐な表現と、春の原野でいっせいに新しい命が萌え出す光景の組み合わせには、なんとも言えない独特の美しさを放っています。
あなたもまた、頭で考えた通りにはいかずに頑固にこわばっている身体的な反応に、よくよく注目してみるといいでしょう。