2月から3月にかけては、退職や人事異動の影響を受けて、職場で様々な変化が起こりやすい季節です。急に大きな責任のポジションに配置されたり、欠員の補充もなく仕事を増やされたり。環境の変化が起これば、おのずと心の変化も起きやすくなります。変化の波を上手に乗り換えるにはどうしたらいいでしょうか。女性性とヨガという観点からひも解いてみます。
伊藤香奈
"女性ならでは"を知る
仕事を任された、異動を言い渡された、仕事が増えたなど、なんらかの変化が起こった時、女性は「抵抗」や「反発」を感じやすいという特徴を持っています。まず知りたいことは、「私は女性だから、心がそういう特徴を持っているんだよね。だから、こういう感情を抱いてしまっても仕方がないんだ」と冷静に対処すること。特に仕事を頑張っている女性であるほど「新しい仕事を受け入れられない私は、能力がない」と自分を責めてしまったり「なんで私ばかり仕事が増やされるの!」と被害妄想を持ちやすく、さらに被害妄想を持っている自分を責めてしまったりと、心の悪循環を生んでしまっています。あなたがそういう感情を持ってしまうのは、あなたの性格や、あなたの未熟さゆえではなく、女性の特徴のひとつでもあるのです。
さらに感情の深くを観察する
しかしこの抵抗や反発は、さらに深く感情を見ていくと実は「怒り」ではなく、「不安」が根底にあります。また、女性ならではのもう一つの特徴として、本当にあるのは不安という感情なのに、それを抵抗や反発といった、怒りの感情で表現してしまうというクセがあります。
例えば、彼が仕事ばかりしていて相手にしてくれない時、本心は「本当に私のこと好きなのかな」という不安があるはずなのに、いざその感情を表に出そうとすると「なんでいっつも仕事ばっかり優先なのよ!」と怒りの感情をぶつけてしまうということがよくあります。彼が浮気をしてケンカするのも、本当は「私だけを見てほしい」という寂しさが根底にあるのに、「他の女と浮気するなんて信じられない!」という怒りの表現で伝えてしまい、「浮気されていると知って寂しかった」とは素直に言えませんよね。
仕事の状況の変化の中でイライラを感じた時、「その奥にある感情は、どんなだろう」と冷静に観察してみる練習をしてみましょう。心の奥にある感情を観察するのは、恋愛より仕事の方が、冷静に客観的にみられるため簡単です(仕事の場面でこの練習をしていくと、恋愛にも活かすことができます!)。
変化に対する不安
なぜ女性の特徴として変化に対して不安を持ちやすいかというと、女性としての身体的特徴が関わってきます。女性は、子供を産み育てるという機能が備わっていることから、実際に子供を持つ持たないに関係なく「安心できる地で(子育てをするために)安定的に暮らしたい」という本能的欲求が男性に比べて強いといえます。共感力が高く周りとの協調性が高いのも、自分の周りの環境を自分や子供にとって安心・安全にしておくための必要な能力として備わっている、という捉え方もできるでしょう。そのため、見知らぬ環境や人間関係の中に飛び込むことに不安を覚えやすく、特に自分で選んだのではなくいきなり与えられる仕事の変化は、自覚している以上のストレスを心身ともに感じていると思ったほうが良いでしょう。
心の不安定を解消するには
女性には、安心・安定を強く求める本能的欲求があり、それが崩れることに不安を感じやすいという特徴があります。また、その不安を抵抗や反発という怒りに変えて表現してしまうクセを持っているものです。このような女性的な特徴を理解するだけで、無駄に自分で自分を責めてしまうことや、「なんで私はうまくいかないんだろう」という漠然とした悩みを抱えづらくなるでしょう。
自分の感情と上手に付き合う
仕事での大きな変化に対処する場合、上記の「女性ならではの特徴」を念頭に置きながら、3つのステップで自分の感情と上手に付き合っていきましょう。
STEP1 感情に気づく
「あの上司がムカつく!」「なんで私ばかり仕事が回ってくるのよ!」と周りの人や環境の事ばかり考えずに、こういう感情を持ちやすいのが女性なのだという客観性を持ちながらも、ひたすら自分の中にある感情が何かを感じます。
「この環境の変化に、私はイライラとしている」
「私ばかり仕事を任されて、私は私だけ損したくないという気持ちがある」
「仕事が増やされて、もっと残業しなきゃいけないなりそうな状況に恐怖を感じている」
などなど。
STEP2 自分の心の奥にある感情に気づく
STEP1で感情ととことん向き合っていくと、抵抗や反発の裏にある不安や恐怖が見え隠れしてきます。実は、残業を増やされることへの抵抗は「残業により仕事が増える→プライベートの時間が減る→婚活を頑張る時間も気持ち的余裕もなくなる→結婚から遠のいてしまう」という、仕事とはまったく違うところにある不安が見えてくることもあるでしょう。
本当の問題の解消法を考える
仕事での変化を表面的にとらえるだけだと、「仕事を減らしてください!」「なぜ欠員の補充がないのですか!」というような目の前に見えている抵抗や反発への対処法しか見えていきません。しかし、STEP2でたとえを上げたように、本当に解決すべきは「結婚から遠のく不安の解消」です。この本当の問題を解決しない限り、いつも表面的な感情に振り回されてしまうのです。
女性性と向き合いながら、感情と上手に向き合うには?
女性性という特徴を認めながらSTEP1~3を実践をしていくのにおすすめなのが、日常的に瞑想を取り入れることです。特に「慈悲の瞑想」や「いつくしみの瞑想」と呼ばれる瞑想の手法では、自分自身がどんな特徴を持っていようとも、すべてに慈しみを持つ気持ちを育てていきます。イライラしやすい自分、不安な気持ちを素直に表現できず、怒りに変換してしまう自分、心の中に色々な不安を抱えている自分。女性らしい感情の抱き方で状況をこじらせてしまう自分。すべてに慈しみを持つことで、状況の変化に対する捉え方が確実に変わってきます。とはいえ、毎日30分も1時間も、座禅を組む時間が必要!ということではありません。まずは日常の中でSTEP1の感情に気づくところから。電車の中やトイレなど、すき間時間に自分の感情に向き合うところから始めてみてはいかがでしょうか。