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[京都]祇園に残る文化財の洋館「長楽館」で優雅なアフタヌーンティーを

旅行・おでかけ

イギリスが発祥のアフタヌーンティーは今や日本でもすっかりポピュラーな存在に。今回ご紹介する「長楽館(ちょうらくかん)」のアフタヌーンティーは、京都で20年以上親しまれてきた本格派。100年前のサロンを彷彿とさせる空間にも引き込まれます。

桜の名所・円山公園の一角に築かれた社交場「長楽館」

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たばこ王とよばれた村井吉兵衛が建てた「長楽館」

京都が大きな変貌を遂げた明治時代、たばこ事業で財を成した実業家・村井吉兵衛は当時の京都にはなかった迎賓館を円山公園の一角に完成させました。竣工当初は東京に拠点を置く村井の「京都別邸」とよばれていましたが、ここを訪れた伊藤博文が素晴らしい眺望を前に「長楽館」と命名。その名称と舞台をそのまま受け継ぐラグジュアリーなホテル&デザートカフェとして、「長楽館」は親しまれています。

アメリカ人技師・J.M.ガーディナーによって設計された洋館は、現在は京都市有形文化財にも指定され、外から見ただけでも期待値が高まります。その期待をはるかに上回るのが扉の向こうに広がる世界。照度を落とした館内はレトロな飴色に染まり、フロアの片隅に置かれたベンチも京都市有形文化財に含まれているそう。確かなバックグラウンドをもつ洋館の重厚感がたまりません。

アフタヌーンティーが楽しめるのは「迎賓の間」

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「迎賓の間」を照らすバカラ社製シャンデリア

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壁の洋画には各国の風景が描かれています

賓客をもてなす場として建てた3階建ての洋館に、村井はなみなみならぬ情熱を傾けていたといい、アフタヌーンティー専用の部屋として開放している「迎賓の間」には、バカラ社製クリスタルのシャンデリアを使用。壁は明治時代の洋画家・高木背水の風景画12枚で飾り、プライベート美術館さながらのサロンで多くの人と交流していました。

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アフタヌーンティーは窓から穏やかな陽が差し込む「迎賓の間」で提供

そんな歴史ある一室で楽しめるのが20年来の看板メニューである「アフタヌーンティー」5500円~(時期によって異なる)。「長楽館」の倉庫からは、古いティースタンドが見つかっていることから、村井の時代もアフタヌーンティーでもてなしていたと考えられています。

スクエア型のスコーンや、ハムとキュウリのサンドイッチにも注目

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取材時は上段にフレッシュなイチゴやムース、洋梨のタルトが

お待ちかねのアフタヌーンティーはスタンダードな銀色のティースタンドで運ばれ、白い食器が色とりどりのお菓子や料理を引き立てます。内容は上段に季節のフルーツやパティシェ特製スイーツを、中段にはスコーン、下段には煮込みハンバーグなどのフィンガーフード類が盛りつけられ、メニューは季節によって異なります。

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スコーンはクロテッドクリームや自社製ジャムを付けて

中段のスコーンはベーシックとクランベリー入りの2種が付きます。お馴染みのスコーンをスクエア型にしたのは、カリッとした食感を楽しんでほしかったから。こんがり焼けた四隅の食感と、中のしっとり感のコントラストを楽しむのが「長楽館」流です。スコーンに付けるジャムは自社製。ある日のメニューにはフランボワーズジャムが添えられていました。

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取材時のケークサレ(手前)はゴボウとレンコンで和風仕立てに

下段のサンドイッチは以前からハムとキュウリと決まっています。アフタヌーンティーの本場イギリスでは新鮮なキュウリが手に入りづらかったため、キュウリのサンドイッチを提供できることが富の証と考えられていたといいます。そんな文化的背景を取り入れたサンドイッチは、長年磨き上げた味だけにおいしさが光っています。ほかに煮込みハンバーグや定番のケークサレなどが盛り付けられています。

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美しいポットを見るだけで優雅な気分に

ドリンクはオリジナルティーやフレーバーティーから選べ、途中で茶葉の種類を変更することも可能です。ハンガリーの名窯・ヘレンドや日本の大倉陶園のカップとポットで提供され、テーブルの景色をつくる食器類にもこだわりが見受けられます。

館内にはタイプの異なる7部屋の喫茶室が!

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座り心地のいいソファー席がある「球戯の間」

3階建ての「長楽館」は、通常1・2階を一般に公開。館内には、アフタヌーンティー専用の「迎賓の間」を含む7つの喫茶室があり、このうち6室は気軽にコーヒーやデザートを楽しむカフェスペースとして開放。例えば、1階にある「球戯の間」は、ビリヤードに興じる場として使われていた一室。グリーンを差し色に使った優雅な部屋にゆったりと家具が配されています。

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クラシックな雰囲気の「鳳凰の間」

2階には美術品を陳列した「美術の間」やエレガントな「貴婦人の間」、2面の窓から陽が差し込む「鳳凰の間」などがあります。カフェルームの指定は基本的にはできないものの、タイミングがよければ、利用した部屋以外を見せてもらうこともできるそう。次回の喫茶時間はどこで過ごせるのか考えるだけでワクワクします。

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館内には自社製ジャムや焼き菓子などを販売するブティックスペースもあります。ここはサンルームとして植物を育てていた一室。別邸のひと部屋を惜しみなく植物専用としていたところにも、当時の村井の暮らしぶりが伺えます。ブティックスペースはフロアの床にも注目を。エキゾチックなタイルは当時のまま受け継がれています。

「長楽館」に隣接する円山公園は、有名な枝垂れ桜の植わる桜の名所。春は多くの人で賑わい、目の前には息をのむような桜の景色が広がります。そんなひと時をアフタヌーンティーと一緒に楽しめるところも、「長楽館」の魅力ですね。

■長楽館(ちょうらくかん)
住所:京都市東山区八坂鳥居前東入円山町604
電話:075-561-0001
営業時間:11時~18時30分(アフタヌーンティーは12~18時の2部制、各2時間)
定休日:不定休
アクセス:阪急京都河原町駅から徒歩15分、または京阪祇園四条駅から徒歩10分

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