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女性もはけるボクサーブリーフをつくった理由「性別関係なく、ノイズを感じない下着を」

ライフスタイル

「ジャストサイズ」の基準は人それぞれ

one novaではブラやビキニショーツに加え、ユニセックスタイプのボクサーブリーフも登場している。まさに筆者が欲しいと思っていたジェンダーを限定せずにはけるボクサーブリーフだ。筆者同様に、女性からの「ボクサーブリーフをはきたい」という声もあり、作られたという。元々発売されていた3Dボクサーとの違いはフロント部分の膨らみがないことだけだ。

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ユニセックスタイプのボクサーブリーフ着用イメージ
株式会社ONE NOVA 提供

いざ商品を発売してみると、「トランスジェンダー向けの商品」だと捉えられることも多かったというが、必ずしもそれだけではないと金丸さんは語る。

「実は、私たちの商品は、『MALE』『FEMALE』『UNISEX』という表記をしているんです。これは、ジェンダーではなくて身体的な特徴に沿って商品を分けているにすぎないということです」

「もちろん、『UNISEX』の商品が増えることで、今まで選択肢がなかったという人に選択肢ができたのであれば、それは喜ばしいことですよ。でも、本来はひとりひとり体の特徴が異なるのだから、それぞれの体の特徴に合わせて最適解を追求すべきだと思っています」

「なので、ユニセックスのボクサーブリーフはトランスジェンダーの方向けとか、女性向けということではなくて、男性で体にフィットする方がはいてももちろんいいと思っています。実際に、前からone novaを使ってくださっているお客様で、ユニセックスのボクサーブリーフのほうが合っていたという方もいます」

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ユニセックスのボクサーブリーフ(左)
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

ユニセックス商品というと、体のラインが出にくいデザインなど最大公約数を求めた商品も多い中、下着という身体に最も近いところにある商品を扱うからこそ浮かび上がってきた視点だろう。

3Dボクサーが合うと感じる女性もいるかもしれないし、ビキニタイプのショーツがフィットする男性もいるかもしれない。「ブランド側が楽しみ方を制限せずに、より豊かな選択肢を提示したい」と金丸さんは語る。

「ユニセックスをつくるのが大事だ、というよりはレディース商品やサイズ展開の豊富さも含め、選択肢を増やしていくことが大事なんだと思います」

「身体の特徴以外にも、感覚的にも人によって『ジャストサイズ』は異なります。身体にぴったりしたものが合う人もいれば、ゆるっとしたもののほうが合う人もいる。ブランドが言う『ジャストサイズ』って目安でしかないなとも思います。なので、お客様自身が本当に自分にとって『気持ち良い』ものに辿り着くのを邪魔しないようにしたいと考えています」

存在感のなさが気持ち良い

ブランドのウェブサイトを覗いてみると「『気持ち良さ』すら忘れてしまうノイズレスな着心地」というコピーが目に入ってくる。では改めて、one novaにとっての『気持ち良さ』とはどんなものを指すのだろうか。

「やっぱり自分の体に一番近い部分でほぼ毎日身につけるものなので、ストレスなく身につけられるといいなと思っていて。その人がその人のままでいいパフォーマンスを発揮できる、伸びやかにいられる『気持ちよさ』が大事なんじゃないかなと思いました。だから、私たちとしてはできる限り商品としての存在感と曇りを無くすことが一番『気持ちよさ』につながると思っています」

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Akiko Kobayashi / OTEMOTO

商品としての存在感を無くす。せっかくつくった商品なのに、つくり手からそんな言葉が出てきたのは、意外だった。具体的にはこんな取り組みをしているという。

「もちろん第一に着心地の部分は大事です。なので、違和感を感じたまま着なくて良いように試着後も返品交換できるようにしています。それ以外にも心理的な部分では、自分の倫理観に反することをしているブランドの商品や環境負荷の高い商品は、身につけていて嫌なノイズになると思うので、そういうことはしません。私たち自身も作るのが嫌ですしね」

「購入体験についても、自分が選べるものがないというモヤモヤを減らしたいので商品ラインナップを増やしました。いろんな面で、お客様が『普段の自分』のままいられるように、できる限りのことはしたいなと思っています」

2018年のスタート時から改善を重ねてきたone novaはこれからどんな方向に向かっていくのだろうか。最後に、今後の展開について聞いてみた。

「私も、共同創業者の高山泰歌も、『生きるという活動』に近いものに関心があるんです。例えば下着もそうですし、睡眠に関連するグッズとかもそうです。もちろん嗜好品も大好きですよ。下着や睡眠グッズなどは、人生の中で接している時間が長くて、自分を下支えしてくれるようなものだから、大切にしたい気持ちが強いんです。なので、今後も生活のベースにある課題を解決するアイテムをつくっていきたいなと思っています」

人によって最適解は異なるという当たり前のことに、改めて気付かされた。つくり手側からおすすめを提示することはいくらでもできるし、限られたリソースの中で商品ラインナップをどんどんと増やしていくわけにはいかない。

そんな中でも、真剣に顧客に向き合っていく姿勢こそが、多くの人にとって『気持ち良い』と感じられるブランドづくりにつながっていくのだろう。

3月8日は国際女性デー。

国際女性デーは、世界中で女性の権利について考える日。OTEMOTOでも、さまざまな立場で活躍、奮闘している女性の声を聞いてきました。多様な生き方を選ぶ女性たちを勇気づける言葉や、自分と向き合うヒントが詰まっている記事をお届けします。

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OTEMOTO

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