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「ネクタイって最近しないよね」。わかる。でもつくり続ける。老舗工場が過去最高売上を達成したわけ

55年の技術が発信を支える

よいものさえつくれば売れるというのは現実的ではありません。よいものをつくってどんと構えていればそのうち誰かが認めてくれるなら、みんな成功しているはずです。逆に、よいものをつくれない工場はとっくになくなっています。よいものをつくることは大前提で、そのうえで知ってもらう努力をしなければいけません。

特に知名度のなかった僕たちはまず選んでいただくための土俵に上がらなければ勝負にならないので、僕は2021年からSNSやブログでの発信、メディアの取材対応に力を入れてきました。

SNSの発信にはリスクもあります。それでも僕が自信をもって発信できるのは、55年間培ってきたものづくりの土台が背景にあるからです。もしも僕が勉強不足のせいで叩かれたとしても、うちには本物の技術がありますし、それを商品が証明してくれます。だから、たとえ何度打ちのめされたとしても、原点に立ち戻ってもう一回やり直しができるという安心感をもって発信することができています。

「僕のことは嫌いでも、うちの商品のことは嫌いにならないでください」なんて言ったことはないですけど、根本的にはそんなスタンスです。

ずっと不思議だった。いつも電話で注文くださるお客様。なんでネットじゃないんだろう?と思ってた。デパートの催し場でお会いしたときに理由がわかった。白い杖をつきサポートをされながら歩いてる。視覚に障害がある方だった。思わず「なんでいつもウチを選んでくださるんですか?」と聞いたところ…

自社ブランドを立ち上げた当時は売上全体の2割をまかなうことが目標でしたが、2021年ごろから自社ブランドの売上が右肩上がりになり、今の売上は受託生産と自社ブランドが2:8の割合になっています。

笏本縫製は2023年4月に創業55年を迎えます。2022年12月の決算期で、54年間の歴史で最高売上となりました。

ネクタイが「しなければならないもの」ではなくなった時代だからこそ、身につけたときの納得感や満足感がより求められます。お客さんと対話しつつ、選ばれるネクタイづくりを追求していきたいと思っています。

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「職人の手もと」は、ものづくりに真摯に向き合う職人たちの姿勢から、日々の仕事や暮らしに生かせる学びをお伝えするシリーズです。

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