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手作り弁当じゃなくても罪悪感はいらない。ミートボールの石井食品社長が、3分間すら時短したい理由

コンサルティングでは「As Is(現状)」と「To be(理想)」という概念で問題を分析します。

理想的な状態は描いておいたほうがいいですが、現状がそこから乖離している場合、理想を実現するためのアクションをする必要があります。ただ、いきなり理想が現実にはならないので、そのアクションの過程で罪悪感を感じる必要はありません。また、理想は誰かに押し付けられるものではなく自分で決めるものだとも思います。

理想が「手作り」だと考える人は、忙しくて手作りがかなわないときには加工品を活用しながら「手作り感のある料理」を追求していくのもひとつのアクションです。そこで加工品を使うのは後ろめたいことではありませんから、石井の商品でも他社の商品でもどんどん活用してほしいです。ただ、「手作り」の重要度が高いかどうかは、誰かに決められることではなく、その人次第だと思っています。

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「手作りの『To be(理想)』と『As is(現実)』について整理してみました」と石井さんが描いた図
Tomoyasu Ishii

ーー石井さん自身は、手作りと加工品のバランスをどうとっていますか。理想と現実のギャップはあるのでしょうか。

僕は、社長と家事、育児を担うという現実で、それこそ生き抜くしかないようなバタバタの状態なので、限られた時間の中でできる範囲の対応をするのが精いっぱいです。

加工品も使いますが、毎日だと自分も飽きてしまうので、ピンポイントで活用することが多いです。妻が味噌づくりをしていたのにならって自家製の味噌を使った味噌汁だけはつくったり、手料理のケータリングを活用したりもしています。

手作りするために時間を使って家族の団らんの時間が減るのは、僕にとってはもったいないことだと感じます。親子のコミュニケーションの時間を確保するためにも、使える商品や家電製品、サービスはどんどん使うようにしています。

石井食品のミートボールは、湯せんの場合は「熱湯で3分」という調理法を表示しているのですが、僕はそれすらもどかしくて、水に入れて火にかけて適当なところで火を止めて他の作業をして、忘れた頃にいい感じに仕上がっているという調理法を編み出しました。子どものために冷ます必要もないのでオススメです。温めずにそのまま食べることもできるので、パックごと持っていって食べる前にご飯の上にかけてミートボール丼にしているといったお客様の声も聞きます。

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石井食品本社1階「Viridian」のキッズスペース。この日、遊んでいたのは石井さんの長女
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

誰かが決めた理想にとらわれたり、自分の理想を他人に押し付けたりしても、誰もハッピーにならないですよね。時代や働き方の変化に伴って「手作り」に対する意識も変わっていますから、「自分はこれがよかった」と思っていても他の人にもあてはまるわけではありません。部活の先輩からしごかれたからといって後輩にも同じしごきをするような苦労の再生産には意味がないと感じます。

石井食品では、佃煮の技術を応用して、1990年代からは毎年おせち料理の製造販売も続けています。おせち料理といえば年末に女性たちが集まって慌ただしくつくるものでしたが、ゆっくりと家族と過ごせるよう、団らんをサポートするコミュニケーションツールとなるよう提案しています。多様な家族のスタイルがあり、それぞれの過ごし方に合うよう、2021年からは1人前のおせちも販売しています。

お客様の反応がきっかけで「おべんとクン」シリーズが生まれたときのように、これからもお客様の声を聞きながら時代に合った商品をつくっていけたらと思います。

※関連記事を後日公開予定です。

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