約500年前に京都の地で創業した「とらや」。歴代天皇や皇族をはじめ、徳川将軍家や歴史上の有名人にも広く愛される老舗和菓子店です。そんなとらやのエッセンスが凝縮された「虎屋菓寮京都一条店」の魅力をご紹介します。
注目の御所西エリアにある、洗練された空間と庭が自慢の喫茶へ
地下鉄今出川駅から徒歩約7分。烏丸通から一条通を入った閑静な住宅街にたたずむ「虎屋菓寮(とらやかりょう) 京都一条店」。とらやといえば「東京の和菓子店では?」と思われる人もいるかもしれませんが、実はその発祥の地は京都なのです。
室町時代後期に創業し、後陽成天皇の御在位中には御所の御用を勤めるようになり天皇や皇族をはじめ、徳川将軍家などからも注文を受けるようになりました。明治2年(1869)、東京遷都にともない、天皇にお供して、京都の店をそのままに、東京にも進出したのです。
永年にわたって御所の御用を勤めてきたとらやが店を構えるのが、現在の御所西エリア。少なくとも寛永5年(1628)の前から店を構えていたことが記録に残っています。
こちらの喫茶は平成21年(2009)にリニューアルし、日本を代表する建築家として知られる内藤廣(ないとうひろし)氏が設計を担当しています。
屋根や天井に木材を多用する建築が得意な内藤氏らしく、天井には緩やかなアーチを描く吉野杉を使った木材が用いられ、やわらかな光が温かみのある空間を演出。一方で柱が設けられていないため、広々とした空間となっているのも特徴的です。
天井から吊り下げられた照明器具をよく見ると、「とらや」のロゴマークをかたどっているのがわかります。遊び心のある仕掛けに、思わず笑みがこぼれます。
店内には、日本の伝統や文化に関する書籍が約600冊設置され、自由に読むことが可能。和菓子はもちろん、茶道や華道、芸能など、手に取って読みたくなる本がたくさんあって、ゆっくりとページをめくりながら静かな時間を過ごせそうです。
庭の奥にはなんと土蔵も!歴史を感じられる美しい庭
店内の大きな窓の向こうにある四季折々の自然に彩られた庭を眺めつつリラックスした気持ちでお茶とお菓子を楽しめます。
庭を望むテラスにも席が用意されています。席の指定はできませんが、爽やかな風を感じながら過ごせるのもすてきですね。
店の北側にあるモダンな表情を感じられる庭には、L字型の水盤に鮮やかな緑の芝生、そして梅や柏、桜、モミジなど和菓子にちなんだ植物が植栽され、春夏秋冬、異なる姿で私たちを楽しませてくれます。
庭の奥には古くからある蔵や稲荷社が設けられ、この地がたどった歴史も感じられます。散策も可能とのことで、じっくり歩いてみたいですね。
京都限定メニューのあんみつから季節の生菓子まで、こだわりの味わいが勢揃い
「きな粉あんみつ」1617円
そんな魅力あふれる空間でいただけるのが、とらやならではの甘味メニューの数々。
特におすすめなのが、京都限定メニューの「きな粉あんみつ」。風味豊かなきな粉餡に、季節ごとにデザインが変わる琥珀羹(こはくかん)、もっちり食感の白玉など、一度にさまざまな味わいを楽しめます。上品な甘さの黒蜜をかけてどうぞ。
「季節の生菓子(抹茶つき)」1650円~
そして、四季を巧みに表現した季節の生菓子は、月2回ラインアップが変わります。好みの飲み物と合わせていただけますが、今回は、物販で販売もしている宇治抹茶「京の調(しらべ)」と共に。抹茶のまろやかな香りと深いうま味、そして苦味が、生菓子のおいしさを引き立ててくれます。
「羊羹 夜の梅(小倉羊羹) 煎茶つき」1430円
とらやといえば、やはり羊羹をイメージする人も多いのではないでしょうか。こちらでは、小倉羊羹の「夜の梅」、黒砂糖の羊羹「おもかげ」、抹茶の羊羹「新緑」の定番3種類の他、季節の羊羹(煎茶つき1540円)を提供。どれにしようか迷ってしまいますね。
「抹茶グラッセ(テイクアウト用)」756円(イートインは990円)
こちらは、テイクアウトも可能な抹茶グラッセ。注文が入るたびに抹茶を点てて提供してくれます。爽やかな香りと深いコクが、特に夏の暑さを和らげてくれそうですね。
「小形羊羹」各292円
さて、甘味を楽しんだ後は京都限定の小形羊羹もおみやげに買って帰りましょう。
「黒豆黄粉」は、京都産の黒大豆と大鶴大豆(おおつるだいず)を煎りあげた黄粉の香ばしい風味を楽しめる人気の一品。
珍しい「白味噌」は、天保元年(1830)に創業し、虎屋菓寮 京都一条店の近くに店を構える本田味噌本店が作った西京白味噌を使用。白味噌のまろやかな味わいがクセになります。
京都生まれの日本画家、神坂雪佳氏が手がけた絵がモチーフのパッケージもすてきですね。