創業186年の歴史を誇るお茶の老舗・森半が、2023年6月に、お茶の魅力を発信する“TEA SQUARE MORIHAN(てぃー すくえあ もりはん)”をオープンしました。歴史ある建造物を大規模に改装した館内には、お茶の世界を五感で楽しめる設備が充実。宇治観光でぜひ立ち寄りたいNEW SPOTをご紹介します。
昔の図面を紐解き、明治~昭和の雰囲気を再現した施設
近鉄小倉駅から徒歩10分。かつて上質な宇治茶を京都に運んだ大和街道沿いに立つのが、2023年6月にオープンした「TEA SQUARE MORIHAN」です。
こちらを手掛ける老舗「森半」は、江戸時代後期の天保7年(1836)にこの地で創業。リノベーションした趣のある建物は、昔の資料をもとに、可能な限り明治から昭和にかけての雰囲気を再現したそうで、2022年に市内では3番目の宇治市景観重要建造物として指定されています。
施設は、中庭を取り囲むように母屋と同時期に建てられた蔵のほか、サロンスペースや見学スペースで構成されています。それでは、早速施設の中に入っていきましょう。
石臼挽き抹茶の香りにときめく!新茶のハーバリウムは圧巻の美しさ
暖簾をくぐった先にあるこちら。一見、タンスのように見えますが、実はこの中で抹茶を挽いているのです。
この中には2基の石臼が置かれ、自動で抹茶を挽いています。その様子は、拡大鏡で見学することも可能です。
「抹茶を石臼で挽くことで、美しい濃緑色になります。1時間でわずか30グラムと、決して効率は良くありませんが、お茶の風味とうま味を味わえる抹茶を生み出すためには、この石臼挽きが一番です」と語るのは、「森半」ブランドを展開する共栄製茶取締役で日本茶インストラクターの森下和哉さん。
森下さんに案内されて細い道をまっすぐと進んでいくと、中庭が見えてきました。こちらには、茶の木が植えられスクスクと育っている様子を近くで見学できます。
その奥には、茶の品質や特徴、使用用途などを見極めるために審査を行う拝見場(はいけんば)があり、実際に茶葉を選定する様子を見学することもできます。
その隣には、お茶づくりを映像で学べるサロンスペースが。そして壁一面には、実際に摘んだ新茶葉で作ったハーバリウム(植物標本)が約300本展示されています。
玉露や碾(てん)茶(抹茶の原料)を育てる茶園は、新茶の時期には覆いで被せられているため、実際にこんなに近くで見ることはできないのです。
「茶園はこのハーバリウムのように美しい濃い緑色をしています。私たちはその光景を疑似体験を通じて多くの人に伝えられればと思い、茶葉の新芽をハーバリウムにして展示しています」と、森下さんは話します。
鮮やかで美しい緑のハーバリウムがズラリと並ぶ光景に、思わず見入ってしまいます。品種によって分別されているので、その違いを間近で眺められるのもよいですね。撮影も可能とのことで、フォトジェニックな一枚が撮りたい方におすすめのスポットです。
「森半 蔵カフェ」でこだわりの詰まった極上抹茶スイーツを
施設内の工場で製造した抹茶やほうじ茶をふんだんに使ったスイーツ、ドリンクを隣接する「森半 蔵カフェ」で味わうことができます。
「丸利 吉田銘茶園手摘み抹茶ラテ」1100円
おすすめは、丸利 吉田銘茶園手摘み抹茶ラテ。
宇治で16代にわたって宇治茶を生産し、手もみ製茶法や本簾覆下(ほんずおおいした)栽培など、伝統的製茶技術を継承する「丸利 吉田銘茶園」が手がけた高級茶葉を使用。深いコクと上質な香り、そして甘みとうま味が口の中にじんわりと広がるおいしさです。
本簾覆下栽培とは、室町時代からお茶の栽培に行われていた方法で、玉露や碾(てん)茶(抹茶の原料)の栽培に用いられています。茶園の上に棚を作り、すだれ状の「よしず」を広げて、稲を干した「わら」を葺き、日光を遮断。お茶の甘み・うま味のもととなる成分・テアニンが渋みの成分となるカテキンに変化することを防ぎます。
こうしてでき上がったお茶は、独特の香りとまろやかで芳醇な風味を合わせ持つ貴重なお茶となります。
「森半特製抹茶サンデー」880円
また、森半特製抹茶サンデーもおすすめメニューのひとつ。濃厚な抹茶ゼリーや冷たい抹茶がけソフトクリームなどが器のなかにギッシリ詰まった、抹茶好きにはたまらない一品です。
「手作り抹茶アイスの三種盛り」880円
季節問わずいただきたいのがこちらの抹茶アイスの三種盛り。奥から和敬、共の森、秋摘み抹茶の3種を一度に食べ比べできる贅沢なメニューです。
「玉露」1760円
よりお茶の美味しさを体感したい人には、農林水産大臣賞受賞の玉露がおすすめ。玉露とは一番茶の新芽が伸び出した頃から茶畑を20日間前後覆い、日光を遮った茶園から摘み取った茶葉で淹れたお茶のこと。うま味成分のもととなるアミノ酸を多く含み、甘くまろやかな味わいを楽しめます。