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将来の妊娠に影響?20~30代女性が考えたい「プレコンセプションケア」を産婦人科医が解説

妊娠を考えはじめる年齢になったら、葉酸は意識するとよいでしょう。

また、摂取したほうがいい栄養素でいうと、「ビタミンD」や「ラクトフェリン」も意識的に摂取するとよいです。

ビタミンDは、これまでも腸や腎臓からのカルシウム吸収に関わるため、欠乏すると骨の軟化がおこり骨軟化症やくる病になることはよく知られていました。

そして、最近では乳がんや大腸がんの予防にも一役買っていることがわかってきました。また、多くの方に関係するかもしれませんが、花粉症などのアレルギー疾患を予防することもわかってきており、今、アメリカでは売れ行きナンバーワンのサプリのようです。

免疫にも関係しているため、元トランプ大統領がコロナ感染した際にビタミンDと亜鉛をまず内服していたとも報じられていましたね。

ビタミンDの血中濃度は30ng/ml以上を理想としますが、当院の患者さんは実に95%の方が不足していました。コレステロールを原料として紫外線をあびると体内でビタミンDは作られるのですが、不足している方がこれほど多いということは、それほど日本人は紫外線対策ができているということかもしれません。

なお、ビタミンDは、妊娠しやすさや流産予防にも効果があることがわかってきており、不妊治療や妊活中の方、妊娠中の方はすぐにでも取り入れていただきたい栄養素です。

色々な栄養素を知ると、つい色んなサプリを摂りたくなってくるかもしれません。なんとなく体調が優れない、疲れやすい、肌つやや髪が気になる……。でも逆説的に言うと、サプリを摂るだけで元気になるのは、健康だからなのです。つまり栄養は、何を摂るかと同時にどれだけ吸収できるかが大事なのです。

そこで重要になってくるのが胃腸です。流行りの腸活ですね。

腸を健やかに保つには、まず余分なものを入れないことが大切です。その余分なものの最たるものが食品添加物です。食品添加物が沢山入った加工食品はなるべく避けるようにしましょう。

そして、良い油や和食によくあるような発酵物をとるように心がけてください。また、腸はゆったりした気持ちになると動くので、なるべくストレスを抱え込まないことが大事です。

さらに腸の中の悪玉菌を増やさないという意味では、余分な鉄を吸収して免疫を調整してくれるラクトフェリンという栄養素が効果的かもしれません。初乳に多く含まれ、赤ちゃんをウイルスなどから守ってくれる働きがあるので、小さく生まれた早産児には特にお母さんからの初乳が大事です。

腸内フローラ(菌の集まり)が私たちの健康に関わってきていることがわかってきていますが、近年、妊娠が上手くいくために、子宮内フローラが関わっていることが研究発表されました。良い受精卵なのになぜか着床しない。そんな時に子宮内フローラが異常だったということがわかってきています。通常、子宮内は「ラクトバチラス」という乳酸菌がほとんどを占めているはずなのですが、その乳酸菌が少なかったり、悪い菌がいたりするということです。子宮内フローラが良くなかった場合の治療にラクトフェリンは大事になってきます。

なお、現在、子宮内フローラを調べる検査は先進医療となっており、2022年に保険診療となった体外受精の取り組みの中で子宮内フローラの検査を受けても混合診療とならず、体外受精は保険が適用されます。

赤ちゃんの健康にもつながる生活習慣病

妊娠する時期の体はものすごく大事で、この時期の健康状態が赤ちゃんの体内記憶に組み込まれていくことがわかっています。ナチスドイツに占領されていたオランダでは、妊娠中かなりの低栄養だったお母さんから生まれた赤ちゃんはその後糖尿病や高血圧などの生活習慣病になりました。体内にいるときに飢餓状態を感じて、生まれてからなるべく栄養を吸収しようとして体重が増えてしまったのです。

また、その他にも

・妊娠中に高血圧になった方は将来高血圧になりやすく、その方の赤ちゃんも将来高血圧になりやすい
・糖尿病既往のある女性にプレコンセプションケアを行った結果、血糖値をコントロールすると赤ちゃんの奇形や早産、妊娠中の死亡リスクが抑えられた
・高血圧や太りすぎ、タバコなどは妊娠・出産においてはよくない

といったことがわかっています。

これらは遺伝とは別で、「エピジェネティックス」といって妊娠中の健康状態がお子さんの遺伝子を調整しているためです。だからこそ皆さんの健康状態は決して自分だけの問題ではないのです。

今の日本人女性は少し痩せすぎでは? と言われています。妊娠のためにはもう少し体重があったほうが良いのです。プレコンセプションケアとは、つまり妊娠前の自らの健康を見つめ直し、色々な検査で自らを知り、必要に応じて栄養の取り方を変えること、そしてこれからの人生を想像することだと思います。

まずは、日々の生活を見直し、ご自身の健康に意識を向けてみてください。

※この記事は2023年08月30日に公開されたものです

古賀文敏
古賀文敏ウイメンズクリニック 院長

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