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服を着る全ての人が絶対観るべき衝撃作!ファッション映画の名作レビュー

ファッション業界の大変革を起こした軌跡を追ったドキュメンタリー映画『ファッション・リイマジン』が、2023年9月22日(金)に公開。ラグジュアリーブランドの新進気鋭のデザイナーが服作りの全プロセスをサステナビリティに挑戦した旅を追った本作品からは、私たちが知らなかったサステナブルファッションの裏側を伝えてくれます。

新進気鋭のデザイナーが切り開いたファッション業界の大変革

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「サステナブルファッション」というと現在は、定着しつつありますが、2017年ごろはあまり注目されていませんでした。この作品は、ラグジュアリーブランドの新進気鋭のデザイナーがファッション業界のスピーディーな体質に危機感を感じ、徹底的に「サステナブル」なプロセスで服作りを行う過程を追った作品。“サステナブルファッション”とは何か?というのを映像を持ってして、知ることができます。

2017年4月、英国ファッション協議会とVOGUEが「Mother of Pearl(マザー オブ パール)*1」のクリエイティブ・ディレクターを務めるエイミー・パウニーを英国最優秀新人デザイナーに選出したところから映画は始まります。

*1「Mother of Pearl(以下mop)」は現代アーティストのダミアン・ハーストの妻だったマイア・ノーマンが2002年に設立し、アーティストとのコラボなどで話題を集めたラグジュアリーブランド。

エイミーは新人賞で得た10万ポンドで、このmopを自身の生き方のルーツに繋がる“サステナビリティ”を、服作りの全プロセスにも反映しようとサステナブルライン「No Frills(ノーフリル−飾りはいらない)」の立ち上げを決意。2018年9月のロンドン・ファッション・ウィークの発表まで、わずか1年半というタイムリミットの中、“地球を壊さず、常識を壊す”という信念の元、理想の素材を探すために奔走し、地球の裏側まで足を運びます。

ファッション業界の真実

華やかなファッション業界の裏で、大量消費の生産体質が環境に負荷をかけている現状。劇中でも驚きの真実が明かされます。

「ファッション業界を国に例えると、その二酸化炭素排出量は、中国、アメリカに次いで世界第 3 位」
「毎年千億もの服が作られ、その5分の3が購入した年に捨てられる」
「海洋に流れるマイクロプラスチックの35%は、合成繊維による洗濯が原因」
「綿花栽培は最も危険な農薬が使われ、毎年推定250万人の児童が綿花の収穫作業に従事している」

衣服品が山のように積まれた埋立地、羊毛を刈り取るときに羊にミュールシングを施す光景などが、目に焼きついて離れませんでした。

自分のルーツを辿ることは本当の目的を知ること

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本映画の主役であるエイミーはイギリスの田舎街の環境活動家の両親の下に生まれ、オフグリット(電気やガスなどのインフラがない)の農場暮らし。家の電気は風力発電でまかなうというトレーラーで幼少期を過ごしました。
そんな子供時代を過ごしたエイミーが、サステナブルな未来を描くのは必然的でした。
彼女の大学卒業制作のテーマは”持続可能性”。エコ素材のニットを発表しましたが、教授たちは当惑。当時のファッション業界は猛スピードで新作を発表し、大量消費を促す業界の体質は、サステナブルとは相反していたからでした。
「ファッションを楽しみながら持続可能な未来を創る」という相容れない2つの考えを“NO Frills”で実現するために、エイミーがまず行うべきとしたのは、服のスタートから完成までを把握し、“トレーサビリティ(追跡)”をすることでした。

エイミーたちの旅で知る“複雑”な服の生産過程

理想の綿とウールを原産地で探し求めるエイミーとチームメイト。その道中では、ファッションの製造工程の複雑さ、不透明さに出会うことになります。
一つの衣料品が出来上がるまでに、通常約5ヶ国もの国を経由。移動距離もかかり、それにともない、二酸化酸素も排出します。服作りは完成までにたくさんの段階を踏むことや、各プロセスで分断が起きているため、輸入元や原材料の産地がわからないことも多々あり、理想の素材、服作りを行う人になかなか出会えません。

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完成したニット1枚が、果たしてどんな環境で羊が育てられているのか、誰が管理していて、その後はどこで紡績を行い、どのような製造ルートをたどるのか...消費者だけでなく、業界の人でさえ大半は知らないと思います。
ペルーの羊毛家に足をんだエイミーにオーナーのペドロが言い放った言葉がとても印象的でした。
「ここまで来たデザイナーは君が初めてだ」

エイミーは、原材料がオーガニックであるだけでなく、製造過程が追跡可能であり、出来るだけ移動距離が少ない最小限の地域で生産することに徹底的にこだわり、コレクションまでになんとか間に合わせようと奮闘します。

自分の信じた道を諦める必要はない

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2018年のファッション業界では「サステナブル」はまだニッチなトピック。コレクション発表前のバイヤー向けの試作品お披露目会では、「地球環境に良くても値段が高いものに客はお金を払わない」と、辛辣なコメントが続きます。

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それでも、エイミーを筆頭にチームは信念を貫き通し、デビューを飾ったロンドン・ファッション・ウィークのコレクション。「No Frills」はコレクション唯一のサステナブルブランドとして大注目を浴びました。そして、英国王室の目に留まるまでに躍進。

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瞬く間に英国のサステナブル・ファッションのリーダーとなり、今や誰もがエイミーの意見を求めるまでに拡大。そして、LVMHや大手ファストファッションブランドも追随して、サステナブルなファッションを打ち出すようになります。
自分が信じた道への理解が少数でも、諦める必要はないと教えてくれます。

自分は何ができるのか、考えるきっかけに

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この映画はただ問題を提起し、悲惨な現実をみせるショッキングな映像ではなく、エイミーたちが服のルーツを紐解いていく、美しい映像美も楽しめるロードムービーです。

鑑賞中は、ファッションを楽しむ一消費者としてどんなアクションを起こせるのか、問いかけざるを得ませんでした。
毎日身につけるインナーウェアはどうしても消耗品として選んでしまいがちですが、オーガニックコットンを使用した製品を選んでエシカルな消費に努めたり、出来る限り長く着続けられる綿や麻で出来た服や古着を選ぶ、という意識をより強く持つようになりました。
何かを知ることや始めることに遅いことはひとつもなく、この映画を観たら、自然と行動に移したくなります。身近な人にトピックとして話すのでもいいと思います。
徹底した信念の貫きからの探求心、アグレッシブな行動に、業界や社会を動かしたエイミー。そんな彼女たちの姿からは、自身も何か小さなことから始めてみようと、一歩踏み出したくなるはずです。

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