今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
身に迫るものを受け止めていくために
今週のかに座は、身に迫りつつある“暗い影”をしかと見定めていこうとするような星回り。
『足もとはもうまつくらや秋の暮』(草間時彦)という句のごとし。
端正に整えられた漢字(足、秋)のはざまで、もつれ、次第に形をうしなって、無に帰していくようなひらがなの羅列を見ていると、何気なく過ごしている日常のはざまにも無や死がまじかに潜んでいるのだと改めて感じられてきます。
あなたもまた、自分の身に残された時間の有限性について、改めて指折り数えてみるべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
影の語り手
今週のしし座は、みずからの内に潜む影をのこらず浮彫りにしていこうとするような星回り。
『源氏物語』を書き上げた紫式部は、一般的な物語をそのまま生きようとはしませんでした。20代後半で貴族男性と結婚し、一女をもうけるものの結婚後3年ほどで夫と死別した彼女は、その現実を忘れるために物語を書き始めたのだと言います。
そこには彼女が自分という一個人の内界に、多彩な分身たちがうごめいていることに気付いていたという背景があったのでは。まず相手となる男性が必要だと考え、文字通り“光源”としての光源氏という男性を立てて、彼と女性たちとの物語を次々に展開させていったのでした。
あなたもまた、自らの内部にうごめく分身たちを照らし出してくれる“光源”をまずは見つけ出していくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
垣根をこえて
今週のおとめ座は、現代人が失ってしまった古代的な感性を思い出していくような星回り。
『よろこべばしきりに落つる木の実かな』(富安風生)という句のごとし。
「うまく言いくるめれば」ではなく「よろこべば」とあり、そこには嘘が入り込む余地はありません。内界と外界が密接につながった古代的な宇宙観なのであって、作者は掲句を通して木と人とは互いに直接影響を与えあっていることを改めて確認しつつ、そうした古い記憶を思い出しているのかも知れません。
あなたもまた、そんな精神的伝統の温故知新がテーマになっていきそうです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
弱くても、愚かでもいいじゃん
今週のてんびん座は、時代の痛みや軋みにグッとまなざしを傾けていこうとするような星回り。
さまざまな業界で、ChatGPTが仕事シーンを書き換えている現在。デザイナーの原研哉は『デザインのデザイン』(2003)の中で注目すべき歴史の一つとして、150年前のイギリスが近代化の過程で機械生産で活気づいた一方で、粗雑な日用品の発生という状況に直面したことを例に挙げています。
いわく、「デザイン」という思想の源流となったジョン・ラスキンとウィリアム・モリスは、それぞれ講演と著作、芸術・デザイン運動という形で、「生活環境を激変させる産業メカニズムの中に潜む鈍感さや不成熟に対する美的な感受性の反発」を展開したのであり、その“痛みの深さ”が引き金となって、「最適なものや環境を生み出す喜びやそれを生活の中に用いる喜び」に基づく既存の芸術とは異なるムーブメントが世に現われてきたのだ、と。
まずは、現在の生活に潜む「鈍感さや不成熟」にしかと目を止めていくべし。