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いつでも使えて便利な「タンス預金」のリスクとは? 相続時にはとくに要注意!

節約・マネー

いわゆる「タンス預金」、お宅にはいくらくらいありますか? 急な現金での支払いにそなえて、現金を家に準備している人は多いと思いますが、便利な反面、「タンス預金」には注意も必要です。特に、相続時には、トラブルのもとになることも。今回は、「タンス預金」のメリット・デメリットや注意点を確認しましょう。

すぐに使える「タンス預金」

「タンス預金」は、金融機関等に預けることなく、自宅に保管されている現金のことを指します。保管場所はタンスに限らず、食器棚でも本棚でも、金庫でも床下でも、「タンス預金」と呼ばれています。

現金で保管されている「タンス預金」のメリットはなにより、「すぐに使える」こと。日常の買い物から、急な病気やケガのための病院等への支払い、冠婚葬祭など、キャッシュレス決済が増えてきたとは言っても、現金が必要な場面は多いものです。休日のATM利用は手数料が高いので、平日にATMからまとまった金額を引き出して自宅に保管されている人も多いでしょう。

また、家族が亡くなった際にも、タンス預金は活躍します。銀行預金の口座名義人が亡くなったことを金融機関が知ると、相続人が決まるまで口座からの引き出しはできなくなるからです。手元に現金があれば、葬儀費用や故人の入院費用の清算など、相続直後の支払いに充てることができます。

タンス預金のデメリット

このように、すぐに使えて便利な「タンス預金」ですが、デメリットもあります。

デメリット1:タンス預金には利子がつかない

「タンス預金」と呼んではいても、実際には家に保管している現金ですから、銀行預金のように利子がつくわけではありません。超低金利が続いたので、「銀行に預けてもほとんど増えないし」と思う人もいるかもしれませんが、多額の現金を長期間自宅に保管していれば、同じ期間同じ金額を銀行に預金しておいた場合に得られた利子との差は大きくなるでしょう。

デメリット2:盗難や焼失、紛失の可能性

お金を失う懸念もあります。タンス預金が失われる原因は、火災や盗難、自然災害など、さまざまに想定されます。

火事に遭った場合、火災保険(家財保険)に加入していれば、家具や家電などは補償対象となりますが、通貨は「家財」に含まれず、補償されません。家財保険に盗難の補償をつけていれば、現金盗難も補償対象になりますが、補償額は一定範囲内に限られます。

単純に「失くす」「忘れる」可能性もあります。今年も「ごみ処理場で現金が見つかった」というニュースを耳にした覚えがあります。

家具に現金をしまっていたことを忘れてその家具を捨ててしまったり、現金が保管してあることを家族が知らずに捨ててしまったり。捨ててしまわなくても、家族が存在を知らなければ、保管場所によってはタンス預金は長期間見つからない可能性もあります。

デメリット3:詐欺被害の可能性

いわゆる「オレオレ詐欺」等の被害を拡大させる可能性もあります。息子や娘を装って電話等で接触されお金を要求される特殊詐欺では、タンス預金を狙ったものとみなされるケースもあるようです。

仮に数百万円を要求されたとして、銀行などから預金を引き出す必要があれば、周囲や金融機関等の人が気づき、声を掛けて被害を防げる可能性もあります。しかし、現金が自宅にあれば、「今から取りに行く」と言われたらすぐに渡せてしまいます。また、宅配便等で送るように言われたら、すぐに送る手配ができてしまうなど、タンス預金は詐欺被害を防ぎづらいと言えます。

「タンス預金」、相続時には要注意

前述したように「すぐに使える」タンス預金があれば、家族の死亡後に発生する葬儀費用や医療費の清算などに活用することができます。

しかし、「タンス預金」も銀行預金同様、相続財産の一部であり、遺産分割が終わるまでは相続人全員の共有財産です。共有財産であるタンス預金を、相続人の誰かが勝手に使ったりすれば、相続人間でトラブルになることは必至。タンス預金は、もともといくらあったのか、いついくら使ったのかもわかりにくいので、実際には勝手に使っていなくても、相続人間で疑心暗鬼に陥ることもあるかもしれません。葬儀費用などに使用した場合に、領収書等を保管しておいて、何にいつどれだけ使ったのか、わかるようにしておきましょう。

タンス預金は相続税対策にはならない

入金・出金、残高の記録が残る銀行預金とは異なり、「タンス預金(現金)にしておけば税務署にみつからない」、「相続税対策になる」、などと考える人もいるかもしれません。しかし、相続税の申告をしなかったり、遺産額を過小に申告したりして、税務署が疑問をもった場合には税務署から「お尋ね」として文書で問い合わせがあり、それでも申告がなされなければ、税務調査が行われます。

市町村役場に死亡届を提出すると相続税法第58条に基づいて翌月末までに税務署にその旨が通知されることになっているので、税務署は故人の死亡を把握しています。そして生前の所得についても把握しているので、「財産があるのに、隠しているのでは?」と問い合わせがくることになるのです。

税務署が調査する際には、故人の預貯金口座の入出金について過去にさかのぼって調査され、生前に多額の出金があるのに相続税申告の「現金」の申告額が少なければ、何に使ったのか、隠して相続税逃れをしようとしているのではないか、と話を聞かれ、自宅を捜索される場合もあります。

その結果、申告すべきなのに申告しなかったとなると「無申告加算税(修正申告の時期・税額によって、5~20%の加算)」がかかります。また、相続税の申告期限内(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)に申告していないので延滞税もかかります。

申告したものの、申告漏れがあった場合などには過小申告加算税(修正申告の時期・税額によって、0~15%の加算)、相続税を逃れるための悪質な遺産隠しだと判断されると重加算税(過小申告加算税・無申告加算税の本来の税額に35・40%が加算)と、相続税本税に加えて、重いペナルティが課されることになるのです。

なお、故人がタンス預金をしていて家族がそれを知らず、タンス預金分を申告しなかった場合も申告漏れになり、延滞税や加算税が課される可能性があります。タンス預金の場所や金額の情報は家族で共有しておく必要がありますね。

参考:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」

このように、「タンス預金」は急に現金が必要な場合などに助かる存在ですが、紛失や盗難、災害等で失うリスク、詐欺被害に遭いやすくなるリスクもあります。また、相続の際には、争族のもとになったり、相続税の申告内容について税務署に疑問を持たれるもとになったりする可能性もあります。

トラブルにつながりやすい高額のタンス預金は避け、家族とも情報を共有して、「現金を用意しておいて助かったね」と思える金額・利用方法にとどめておきましょう。

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