宗派がなく、誰でも受け入れてくれる懐の深いお寺、善光寺。四方八方から境内に入れることも、その表れかもしれません。そんな善光寺の仲見世通りに、2022年春、ウィスキーが楽しめるバーがオープンしました。日中の賑わいに反して、夜になるとひっそりとして人通りも少なくなる仲見世で、知る人ぞ知る大人の空間を訪ねてみました。
テイクアウト店の奥に、洗練されたバーが出現!
日中は多くの参拝客でにぎわう善光寺仲見世通り
みやげ物店に飲食店、食べ歩きできるテイクアウトの店など、数多くの店が軒を連ねる善光寺の仲見世通りですが、その大半は16時ごろまでの営業。日の出とともに「お朝事」が行われる善光寺だけに、朝早く夜も早い町なのです。
昼は店頭で信州名物おやきなどを販売する「いづみや民蔵」
だるまが描かれたのれんが目印
そんななか、日が暮れるとひっそりと灯がともる、隠れ家のようなバーがあります。その名は「いづみや民蔵」。バーらしからぬ、渋い店名も印象的です。
のれんをくぐって建物に入ると、趣のある古い看板に目を奪われます
「いづみや旅館」だった頃の建物。2階に客室がありました
ここはもともと、初代・清水民蔵さんが大正時代に「いづみや民蔵」として旅館を創業。昭和25年(1950)に「いづみや旅館」と改名し、4代目が建物内に設けた民芸喫茶とともに、長らく参拝客をもてなしていました。2022年に旅館の営業を終了することとなり、その後、建物をリノベーション。かつて喫茶スペースだった空間を活用して、お酒好きな5代目店主・清水あきらさんが、バーをスタートさせたのです。
風情ある囲炉裏の席も。静かなバーでウィスキーを
冬には囲炉裏に火が入ります。大きな石は、かつて店の前に飾ってあったもの
建物の中に入ってみると、ウィスキーのボトルがずらりと並ぶバーになっていて、まるで異空間に紛れ込んだかのよう。カウンターの手前には、民芸喫茶の風情を残す囲炉裏スペースが。火の暖かさとともに、くつろげる和の雰囲気を漂わせています。5mの一枚板のカウンターとグリーンのチェアも、店主・清水さんがこだわったもの。座り心地がよく、ゆったりとくつろげます。
ウィスキーに加え、日本各地のクラフトジン、グラッパも数種揃えています。テーブルチャージは500円
カウンターにあるウィスキーのボトルは、ウィスキー好きの清水さんが厳選したものです。アメリカで造られるバーボンに、蒸留所の個性が光るシングルモルト、香りと味のバランスを追求したブレンデッド、日本ならではのこだわりを感じるジャパニーズウイスキーなど、その数60本ほど。ストレートでも、ロック、水割り、ソーダ割りでも、価格は同じ。ウィスキー通はもちろん、清水さんがビギナーにも飲みやすい一杯を教えてくれるので、ご安心を。
以前はお通しとして大福を出していたそうですが、現在は諸事情により見直し中。燻製ナッツやピザ、ソーセージ、おでんなどがおつまみとして楽しめます。清水さんは和食歴30年の料理人でもあるだけに、予約して予算を伝えれば、ウィスキーに合う食事も用意してくれるそうですよ。
クラフトバーボン「ベイカーズ」950円は、甘い香りとスパイシーな味わいが特徴
大きな角氷をピックで削って使用。通常の氷に比べ、溶け方がゆっくりなのだとか
暖かい囲炉裏もテーブルとして使っています
趣あふれる囲炉裏のスペースでお酒を楽しむこともできます。近くに座った人同士、会話に花が咲くことも。信州の寒い冬も、ここなら身も心もぽかぽかになりそうです。