今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
風に貫かれる
今週のかに座は、風と共に口の中の内臓の奥までいったん言葉を飲み込んでいくような星回り。
『秋立やあつたら口へ風の吹(ふく)』(小林一茶)という句のごとし。芭蕉に対する尊敬や憧れに妬みや怒りの混じった複雑な思いを胸の内に感じつつ、そんな相手のくちびるを寒からしめたのと同じ秋風が、今年もようやく吹きはじめた。
この句は多作で知られ、日ごろから口数も多かった作者の、自分自身への戒めの一句だったのかも知れません。
あなたもまた、自身の腹を圧力釜にでも見立ててじっくりと自身の言葉や思いがすっかり変質してしまうまで煮込んでいきたいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
復讐するな
今週のしし座は、みずからの苦しみの輪郭を何がしか言葉にして訴えかけていこうとするような星回り。
およそ100年前の関東大震災の直後に、治安警察法に基づく「予防検束」の名目で、内縁の夫である朴烈とともに検挙され、天皇制を否定したことで大逆罪で起訴され、有罪となり、その後恩赦が出るもそれを破り捨て、たった23歳の若さで自死した運動家・金子文子。
彼女は無戸籍児として生まれ、教育の代わりに壮絶な虐待を受けて育ち、自殺を考えるほど追い詰められたが、16歳の時に日本統治下の朝鮮で起こった独立運動を目撃し「私にすら権力への叛逆気分が起こり他人事と思えぬほどの感激が胸に湧く」と述べており、それが彼女をアナキストにさせた原動力となっていたのかも知れません。
あなたもまた、みずからの境遇と重ね、深い共感と愛情を抱けるような相手や対象に猛烈に惹きつけられていきやすいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ネゴるぞ
今週のおとめ座は、言葉の古い使い方を新しいそれへと向け変えていくような星回り。
『紙飛行機になる八月のカレンダー』(島津優人)という句のごとし。2013年の俳句甲子園の優秀作より。戦後日本において「八月」と言えば、それはかつての悲惨な戦争体験とほとんど無条件に結びつけられてきました。
ところが、作者にとって「八月」とはあくまで夏休みの季節であり、掲句も過ぎ行く青春の淋しさについて詠んだものとして、出場した高校生たちに読み取られたのだといいます。
あなたもまた、過去の世代の人たちの祈りをいかに未来へ向けて、自分の手で届け直していけるかということに、おのずと引き寄せられていくはずです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
眼を光らせろ
今週のてんびん座は、自分を閉じるのではなく開いていこうとするような星回り。
パリに生まれた詩人ボードレールは、匿名の人間として群衆のなかをひとり、ぶらぶら歩きする愉しみを「群衆に沐浴(ゆあみ)する」と表現しました。
あまり意味のあることばかりしていると、移ろいやすいもの、傷つきやすいもの、滅びやすいものが眼に入らなくなるという意味で、それしかできないというのは無能力の証なのかも知れません。
あなたもまた、街を無目的にぶらぶら歩いて、その道すがら、未知のものの感触に自分を委ねてみるといいでしょう。