睡眠症状ではないかもしれないけれど、気になる睡眠の疑問について読者から募集。不安に思っても、実は悪いことではなかったりする場合も。睡眠に関する専門医である井上雄一先生が答えてくれました。
睡眠のお悩みQ&A
Q. 眠かったのに布団に入るとなぜか目が覚めてしまいます。
A. 眠ろうとして頑張ることを諦めてください。
「“心理的な過覚醒”といって、寝なければと思うと緊張したり不安になったりして、余計に目が冴えることがあります。そういう人は眠ろうとするほど焦ってしまうので、15分眠れなかったら諦めて寝床から出る。リビングなど別の部屋へ行って、肩の凝らない本を読んだりリラックスできる映像などを見て過ごしましょう。そのうち眠くなったら、寝床に戻ります。そうして眠れると睡眠に自信がついて、寝つきがよくなってきます」
Q. 睡眠不足や寝すぎで頭痛を感じたりするのはなぜですか。
A. 体質的なものが原因です。規則正しい睡眠が改善への道。
「これは“睡眠関連頭痛”といって、夜間後半のレム睡眠から目が覚めたとき、あるいは早朝に頭痛が出るという人はけっこう多いんです。脳の血液循環が影響していると言われることもありますが、かなり体質に左右されます。解決するには、規則正しい睡眠習慣が必須です。あるいは姿勢が悪いまま長い時間眠っていたせいで、首や肩が凝って頭が痛くなる人もいます。こちらも、ほどよい適切な寝室環境が解決策になります」
Q. 十分に寝た日でも、眠くなるのはなぜですか。
A. 寝だめをしても無意味。睡眠のリズムを整えましょう。
長時間眠って寝だめする、という考えは誤り。「休日に夜更かしや朝寝坊すると、睡眠のリズムが狂って時差ぼけになり、頭がぼんやりしてしまいます。人間は、寝だめができません。寝不足解消のためにたっぷり寝たいなら、いつもより1時間半早く寝て、1時間半遅く起きる。これなら、睡眠のリズムを崩さず長く眠れます。運動をして適度に疲労して、睡眠の質を上げることも、日中元気に活動する上で重要です」
Q. 眠ろうとするとイライラしたことや不安、悪いことを考えてしまう。
A. ベッドに考え事を持ち込まないコツがあります。
井上先生によると、同じ悩みを持つ人は大勢いるそう。「英語で“ベッドタイムシンキング”といいますが、寝床で考え事をして眠れなくなる人は多い。そういう場合私は、寝室以外の部屋で、ノートに頭の中を書き出すよう勧めます。考えていることをつらつら書いて、満足したらノートを閉じてベッドへ戻る。寝床では、ノートの内容を考えない。趣味のこと、楽しいことをなんとなく考えていれば、そのうち眠ってしまいます」
Q. 目覚ましの設定時間より早く起きることは悪いことですか。
A. 全く問題ありません。逆に早く寝るほうが問題です。
アラームより30分くらい早く起きる分には問題ないと井上先生。「体内時計があるので、毎日起きる時間が近づくと自然と覚醒するのです。気をつけるべきは、“明日早いから早く寝る”というパターン。通常の就寝時間より2時間くらい前は“睡眠禁止ゾーン”といって、一番眠れない時間。そこで無理に寝ようとするとかえって眠れず、睡眠リズムが狂う原因になりかねません。睡眠時間は、無理に操作しないほうがよいでしょう」
Q. 就寝中、空や高いところから落ちてしまう感覚はなんでしょうか。
A. 何回も起きるようなら不眠症のきっかけになる恐れが。
多くの人が体験したことがあるであろうこの現象には、れっきとした名前があるそう。「“入眠時ビクつき”という生理現象で、人によっては体がビクンとしたり、視界に閃光が走ることもあるようです。原因は不明ですが、カフェインやニコチン、アルコールなどの刺激物がよくない、という説があります。これが、ひと晩に5回も6回も起きて眠れなくなるというケースも。そういう人は、睡眠クリニックで治療を受けられます」
睡眠総合ケアクリニック 代々木理事長 井上雄一先生 睡眠の悩みを抱える人に対し、精神科や呼吸器内科、神経内科などが連携して治療に当たるクリニックを開設。監修を担当した『名医が答える! 不眠 睡眠障害 治療大全』(講談社)など、多くの睡眠関連書籍に携わる。
※『anan』2024年9月4日号より。イラスト・菜々子 取材、文・風間裕美子
(by anan編集部)