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限界集落を「1000人の桃源郷」に。前田薬品3代目が目指す、社員と地元が幸せな15年後

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アロマ工房では、アロマバスソルトづくりなどを体験できるワークショップが開催されている
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

最初はただ、ハーブを育てる畑と精油を抽出する工房をつくれたらと思っていました。富山県内で土地を探し始め、百十数カ所を巡ってここに行き着いたら、農業、飲食、宿泊事業など、新しい業態が自然に生まれてきました。

前田薬品は外用剤を得意としているので、アロマを使ったスキンケア商品をつくり、立山のアロマブランド「Taroma」を立ち上げました。そのエッセンシャルオイルを使ったスパや、ハーブウォーターでのロウリュウがあるサウナホテルもオープンしました。米づくりにも挑戦し、地元の豊かな食材を提供するレストランをつくりました。三角屋根のイベントスペースではマルシェやコンサート、結婚式を開催しています。

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アロマ工房で抽出したエッセンシャルオイルのトリートメントが受けられるスパ(左)と、2種類のサウナ室を設けた貸切型のサウナホテル「The Hive」

The Hive

Akiko Kobayashi / OTEMOTO

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僕自身、出張でひっきりなしに移動していますが、ここに来ると毎回、五感が研ぎ澄まされる感覚になることに驚きます。

高いビルに人を押し込むような都市型のスタイルとは対極の場所です。建物も人も密集しておらず、見渡す限り大自然が広がっています。空をゆっくり見上げ、雄大な山並みをただ眺めていると、悩みやトラブルなど些細なことに感じられ、自分らしい幸せについて深く考えるようになります。

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隈研吾さんが設計した多目的イベントスペースは結婚式やヨガなどに利用されている
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

1000人の村をつくる

この地区は9世帯20人のいわゆる限界集落でした。うち15人が65歳以上で少子高齢化が進んでおり、地区にあった小学校は2019年に廃校になりました。

ここを、300世帯1000人の村にするのが僕の夢です。年間10万人の観光客が訪れ、住んでいる人と訪れる人が混ざり合い、日本語だけでなく英語も飛び交うような村にしたい。

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廃校を活用した体験宿泊型の施設の準備が進んでいる

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Akiko Kobayashi / OTEMOTO

小学校の跡地は、コクヨの空間設計プロデュースのもと宿泊体験施設として再活用する準備を進めています。また、築130年以上の古民家「土肥邸母屋」は、宿泊施設とおばんざい屋にリノベーションしました。台所を仕切るのは、地元の女性たち。75歳の女性が面接で「これからますます自分を成長させていきたい」と話していたというのが忘れられません。

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築130年以上の古民家を宿泊施設にリノベーションした
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

僕は前田薬品の3代目ですが、後継者を育てた後は、健康づくりのためと好きな富山のために心血を注ぐつもりです。

限界集落を1000人の村にするなんて無謀だと言われるかもしれませんが、「世界一美しい村」にしたいと、僕は本気で思っています。日本の古きよき原風景こそが"最先端"だという価値観が生まれるように、この村をアップサイクルしていきたい。

経済合理性とは対局にあっても、幸せの曲線を上げるってこういうことだという一つの答えをこの村から示していきたいです。2040年に僕が還暦を迎えるときに住みたい桃源郷を毎日イメージしています。

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取材の日、おばんざい屋の開店準備が進んでいた
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

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特集「心のローカル」 / OTEMOTO

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